
「数える仕事」は、どこまで消せるのか
在庫・倉庫のDX事例10選
在庫の仕事の正体は「数えること」だ。棚卸しで数え、ピッキングで探し、出荷前に突き合わせ、問い合わせが来るたびにまた数える——そして数え間違いが、誤出荷と機会損失になる。数える仕事をRFID・ロボット・システムに渡した10社が、時間と人手をどれだけ取り戻したのか。98名のアパレル工房から世界規模の物流センターまで、成果の数字で並べた。桁がひとつ違う数字が、この分野には並んでいる。
選定の基準と範囲:当サイトの掲載事例3,072件のうち、在庫・棚卸し・倉庫・出荷まわりの業務のデジタル化を扱い、数値成果が公開されている事例から、手段(RFID・ロボット・WMS・システム照合)と業種が重ならないように編集部が10本を選んだ(同一ベンダーは最大3本まで。別テーマの10選で取り上げた事例は除く)。順位ではなく並列の「選」であり、製品の優劣や市場の代表性を示すものではない。数字はいずれも各事例の公開情報に記載のもので、対象・期間は各事例記事から確認できる。
登場サービスの提供企業へ、編集部がまとめてお取り次ぎします(次の画面で選択を外せます)。
0120名で1週間の棚卸しが、2名で1日になった
有限会社玉木新雌 ・ 小売・EC ・ 従業員98名
従業員98名のアパレルブランド・玉木新雌では、QRコードの1点読みで作品を探すのに膨大な時間がかかり、棚卸しは20名体制で1週間を要していた。RFIDに切り替えて段ボールの外から一括読み取りできるようにし、棚卸しは2名・1日——工数にして10分の1に。ものづくりの現場の時間を「数える仕事」が食っていたことが分かる1本。
0224,000点の棚卸し57時間が、2時間になった
サントリープロダクツ株式会社 ・ 飲食・食品
サントリープロダクツの工場では、設備予備品約24,000点を目視と手作業で管理し、棚卸しに20人で計約57時間、管理方法はエリア担当者しか知らない属人状態だった。RFIDの資産管理に切り替えて棚卸しは約2時間(95%減)に。「数えるために人を集める」という工場の年中行事を終わらせた1本。
03店を閉めて数えていた40時間が、3時間になった
株式会社コックス ・ 小売・EC ・ 従業員1,828名
アパレルのコックスでは、店舗の棚卸しでJANコードを1点ずつスキャンする作業に膨大な時間と人手を取られ、接客にも影響が出ていた。RFIDで一括読み取りに変えて棚卸しは40時間から3時間、人数は6人から1人に。バックヤードの仕事を減らすことが、売場の接客時間を増やすことと同じだと示す1本。
04棚が人のところへ歩いてきて、作業員50人分が浮いた
Bosideng ・ 製造業 ・ 従業員20,000人以上
ダウンウェア大手Bosidengの倉庫では、売上の急伸に手作業のピッキングが追いつかず、フォークリフトのコストとピッキングミスが膨らんでいた。棚ごと人の元へ運ぶピッキングロボットを入れ、出荷能力は毎時3,500個、フォークリフト10台と作業員50人分を削減。「人が歩いて探す」を前提から覆した1本。
Bosideng、ピッキングロボット導入で出荷キャパシティ3.5倍向上・人員50名削減を実現この事例の詳細を読む →05ピッキングの歩行距離を消して、効率が3倍になった
アズワン株式会社 ・ 小売・EC
研究・医療機器通販のアズワンでは、取扱SKUの拡大で作業面積と作業者の歩行距離が増え続け、物流センターの生産性が頭打ちになっていた。商品を人の前まで運ぶGoods-to-Person方式を導入し、ピッキング効率は3倍以上、作業生産性は37%向上。SKUが増えるほど効く「歩かせない」設計の1本。
アズワン九州DCにPopPick導入、ピッキング効率3倍以上・生産性37%向上を実現この事例の詳細を読む →06事業部ごとにバラバラだった倉庫が、半分の人数で回るようになった
サンケン電気株式会社 ・ 製造業 ・ 従業員11,300名
従業員1万人超のサンケン電気では、複数の事業部が個別に保管・配送を管理し、人手頼みの運用でデータの正確性も欠いていた。倉庫管理システム(WMS)で管理を統一し、必要人員は25名から11名(56%減)に。在庫DXの効果が「数える速さ」ではなく「管理の統一」から来ることもある、と示す1本。
07「在庫ありますか」の電話対応、月500時間が72%減った
日本特殊陶業株式会社 ・ 製造業 ・ 大企業(海外売上比率約8割)
スパークプラグ大手・日本特殊陶業では、販売代理店からの在庫・出荷状況の問い合わせに電話とFAXで応え、全国の営業所20名余りが月間約500時間を費やしていた。代理店が自分で照会できる仕組みに変えて問い合わせ業務は72%減・月350時間の削減。在庫の悩みは倉庫の中だけでなく「在庫を聞かれる側」にもある、と気づかせる1本。
08出荷指示書と送り状の突き合わせ1〜2時間が、ゼロになった
有限会社ワールドアイズ ・ 小売・EC ・ 従業員数不明・4物流拠点
コンタクトレンズECのワールドアイズでは、出荷指示書と送り状が別々のため、毎日1〜2時間の目視突き合わせが発生していた。配送サービスの切り替えと合わせて出荷データを一本化し、突き合わせ作業はゼロに、販売数も安定して増加。4拠点の小さな物流でも「二重のリスト」をやめれば時間が返ってくる1本。
09出荷していいかの判定が、74%速くなった
大鵬薬品工業株式会社 ・ 医療・介護
大鵬薬品工業では、出荷判定や品質照査のたびに複数システムと紙のデータを人手で集めて突き合わせており、膨大な工数と業務の暗黙知化を招いていた。業務プロセス管理(BPM)でデータの流れを標準化し、出荷判定の業務時間は74%減、品質照査は78%減。医薬品という「間違えられない出荷」の裏側を変えた1本。
10在庫はモノだけではない——PCの棚卸し1カ月が、数日になった
株式会社カシワバラ・コーポレーション ・ 建設・不動産 ・ 従業員500~999名
従業員500〜999名の建設会社カシワバラ・コーポレーションでは、IT資産の管理・棚卸しを表計算ソフトの手作業で行い、1カ月を要していた。資産情報を自動収集する管理ツールに切り替えて棚卸しは数日に。倉庫の在庫と同じ「数える仕事」が情報システム部門にもあること、そして同じ解き方が効くことを示す、締めの1本。
数える仕事は、人の仕事ではなくなりつつある
10本を並べると、在庫DXの数字は他の分野より一桁大きい——57時間が2時間、1週間が1日、1カ月が数日。理由は単純で、「数える」は完全に機械が得意な仕事だからだ。そのうえで型は3つある。数え方を変える(RFIDの一括読み取り:玉木新雌・サントリープロダクツ・コックス)、探し方を変える(棚やモノが人のところへ来る:Bosideng・アズワン)、そもそも数えなくて済む流れにする(WMS・データ一本化:サンケン電気・ワールドアイズ・大鵬薬品)。そして在庫の悩みは倉庫の外にもある——在庫を聞かれる営業所(日本特殊陶業)、PCを数える情シス(カシワバラ)。次の一歩は、自社で「定期的にモノを数えている場面」と「数え間違いの後始末」を書き出すこと。数える回数×人数×時間の掛け算が大きい場所から、この10本の型が当てはまる。
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