事例セレクション#023
2026.10.12

オフィスを変えたら、人が変わった。
空間づくりの事例10選

工場の床を白く塗った。休憩室を食堂にした。9フロアに散らばっていた本社を2フロアにまとめた。この10本には、新しいソフトウェアがほとんど出てこない。変えたのは机の並びと、壁と、昼ごはんを食べる場所だ。それでも応募が来なかった会社に6名が入り、週3出社の方針が体感で週4〜5になり、売上が20%以上伸びた会社がある。人は仕組みより先に、場所に反応する。オフィス・工場・食堂という空間を変えて数字を出した10社を、変えた場所が重ならないように並べた。

選定の基準と範囲:当サイトの掲載事例5,469件のうち、オフィス・工場・社員食堂などの空間づくり(移転・新築・レイアウト変更・内装・設備更新)を主な施策とし、数値成果が公開されている36件から、変えた場所(執務エリア・床・食堂・フロア構成・顧客接点)と目的(採用・出社・交流・売上)が重ならないように編集部が10本を選んだ(同一ベンダーは最大3本まで。別テーマの10選で取り上げた事例は除く)。順位ではなく並列の「選」であり、製品・施工会社の優劣や市場の代表性を示すものではない。数字はいずれも各事例の公開情報に記載のもので、対象・期間は各事例記事から確認できる。満足度や出社頻度は各社の社内調査・自己申告による値で、第三者の検証を経たものではない。

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01引っ越しの前に、社員が180枚のカードを選んだ

株式会社Agoop ・ IT・ソフトウェア ・ 従業員69名(2018年1月1日現在)

従業員69名の情報サービス会社Agoopは、オフィス移転にあたって設計会社に図面を頼む前に、社員参加型のワークショップを開いた。180枚のカードから新しいオフィスで起こってほしい行動を選び、ペアで対話して引き出したニーズを、ホワイトボードの壁面、カフェ風の執務空間、社長との距離を縮める掘りごたつのミーティングエリアに落とし込んだ。移転後、売上は20%以上増え、営業と技術がホワイトボードの前で顧客価値を議論する場面が増えた。空間の設計図より先に、行動を決めた1本。

売上増加
20%以上
ワークショップを通じたオフィス移転で売上20%以上増加、社内コミュニケーション活性化を実現この事例の詳細を読む →

02応募がほとんどなかった会社に、新社屋で6名が入った

中野電工株式会社 ・ 建設・不動産

電気工事業の中野電工は、社屋が老朽化し、採用の応募がほとんどない状態だった。新築にあたって目的を採用力の強化と企業イメージの向上に絞り、社員へのヒアリングを重ねて、仕事内容に合わせたローパーテーションの半個室レイアウト、人が自然と集まるパントリー、会議室を設計した。結果、採用人数は6名増加。特徴的な外観は地域の目印になり、社員のモチベーションも上がった。求人媒体に一円も足さずに、建物で応募を増やした。

採用人数増加
6名
オフィス新築によって採用人数6名増加、社員モチベーション向上を実現この事例の詳細を読む →

03工場の床を白くしたら、応募が来た

株式会社日本ツクリダス ・ 製造業 ・ 従業員数不明

金属加工商社の日本ツクリダスは、町工場の負のイメージを払拭し、従業員が楽しく働ける環境をつくりたかった。やったことは、工場の床をオレンジから白に塗り替え、無溶剤のUVコーティングを施すこと。テスト施工で品質を確かめ、2020年3月に本施工した。床の色が変わると従業員の気持ちが前向きになり、自ら工作機械のホースの色を変えるなど改善提案が増え、ホームページを見た求職者の応募が増加。環境の美しさを理由に応募した従業員が最低3人いる。10本の中で最も小さな工事で、最も分かりやすい変化を出した1本。

採用応募者増加
環境の美しさを理由に応募した従業員が最低3人
工場床の塗装・UVコーティングで従業員モチベーションが向上し、採用応募者が増加この事例の詳細を読む →

04延床2.2倍の新工場を、従業員が設計に加わって建てた

日本ジッパーチュービング株式会社 ・ 製造業

日本ジッパーチュービングは、老朽化と増築の繰り返しで狭くなった2つの工場を抱え、工場間の資材運搬に手間がかかり、新製品の開発スペースも足りなかった。統合移転にはコンストラクション・マネジメント会社を入れて行政手続きと建設会社選定を一元管理し、設計には従業員の声を最優先で反映。社内公募で名付けたプロジェクトとして全社で進めた。新工場は延床面積2.2倍、敷地面積3.1倍で、当初予算内に竣工。フリーアドレスで部署間の会話が増え、面接や商談で訪れる人からの評判も良い。移転を、総務の仕事ではなく全社の仕事にした。

延床面積
2.2倍
敷地面積
3.1倍
工場移転・統合プロジェクトで延床面積2.2倍、敷地面積3.1倍の新工場を実現この事例の詳細を読む →

05週3出社の方針が、社食で体感週4〜5になった

株式会社TVer ・ IT・ソフトウェア ・ 中途採用社員が約8割で毎月増加

動画配信サービスのTVerは中途採用社員が約8割で、部署ごとに出社曜日が違うため交流の機会が限られていた。シャッフルランチのような企画は運営の負荷が大きい。オフィス移転に合わせて、行列のできる有名店の料理をビュッフェ形式で出す社食を週5日入れ、会社が費用の一部を負担した。年齢や部署を越えた会話が自然に生まれ、新入社員が組織に馴染むきっかけになり、出社頻度は方針の週3日から体感で週4〜5日に。人を集める企画をやめて、人が集まる場所をつくった。

出社頻度
方針週3日から体感週4~5日増加
有名店社食の導入で偶発的コミュニケーションを活性化、出社頻度向上を実現この事例の詳細を読む →

06コンビニまで20分の職場に、50㎡の食堂ができた

株式会社タケエイ ・ その他 ・ 従業員64名

廃棄物処理業タケエイの東京リサイクルセンターは従業員64名、最寄りのコンビニまで20分という立地で、昼食の選択肢は仕出し弁当だけだった。休憩室を社員食堂に改装することにし、厨房機器メーカー、食堂運営会社と3社で約50㎡に喫食スペースと厨房を収める設計を1〜2カ月でまとめ、8月に引き渡した。目標の40食に対して利用は約50食。従業員のリクエストで営業していなかった土曜日も開けることになった。福利厚生の一行目は、昼ごはんだった。

提供食数
40食→約50食
限られたスペースに短期間で社員食堂の厨房を設計・施工、従業員満足度向上を実現この事例の詳細を読む →

079フロアを2フロアにしたら、9割が満足と答えた

日鉄興和不動産株式会社 ・ その他

日鉄興和不動産は経営統合後、旧本社が9フロアに分かれていたことで部署間に物理的・心理的な壁があり、統合のシナジーが出ていなかった。本社を2フロア約550席に集約してフリーアドレスとABWを導入し、全社員にモバイルPCとスマートフォンを支給。可動間仕切りで分割できる40以上の会議室と、ケーブル不要の音響・映像システムを整えた。移転約3カ月後の調査で、オフィスに満足する社員は9割、部署の壁を越えたコミュニケーションの向上に満足する社員は7割。壁を減らすなら、まずフロアの数を減らす。

オフィス満足度
9割
部署の壁を越えたコミュニケーション向上に満足する社員
7割
フリーアドレス・モバイル環境導入で部署間コミュニケーション活性化と働き方改革を実現この事例の詳細を読む →

08ここで働くことを誇りに思う回答が、5.3倍になった

コニカミノルタ株式会社 ・ 製造業 ・ 従業員300人以上

コニカミノルタの情報機器事業は、事業形態の変革に合わせて社員の知的創造性と生産性を上げる必要があり、オフィス移転を機にワークスタイル変革に取り組んだ。オフィスを「舞台」と位置づけ、ワークショップで社員の総意をつくり、オルタナティブアドレスの導入、ペーパーレス化、コミュニケーションスペースの最適化を実施。移転後の調査で、ここで働いていることを誇りに思うという回答は5.3倍、紙の保有量は72%減、他部署とのコミュニケーション満足度は30%向上、会議場所の確保のしやすさは20%向上した。移転の前と後で同じ質問をしたから、変化が数字になった。

ここで働いていることを誇りに思う
5.3倍増加
紙保有量削減
72%削減
ワークスタイル変革による社員満足度向上と生産性改善この事例の詳細を読む →

094時間の仕事が3時間になり、1年間の離職はゼロだった

株式会社 YSK e-com ・ IT・ソフトウェア ・ 従業員数不明

山梨の情報システム開発会社YSK e-comは、本社隣接地に新館を建てるにあたり、社員のパフォーマンスとコミュニケーションを上げる執務エリアを目指した。SEの仕事にフリーアドレスは向かないという反対意見があったため、社長・専務・若手社員が実際の運用現場を見学して運用のポイントを学び、固定電話の廃止とモニター・ノートPCの一新を実行。2階に約70席のフリーアドレスを設けた。会長は、これまで4時間かかっていた業務が3時間でできるようになったと語り、離職率が高いとされる業界で1年間の離職はゼロ。反対意見は、議論ではなく見学で解けた。

業務時間削減
4時間→3時間
離職率
ゼロ(1年間)
山梨県一の働きやすいオフィス新館で、フリーアドレス化により社内コミュニケーション活性化を実現この事例の詳細を読む →

10客が来るオフィスにしたら、顧客満足度が77%から93%になった

株式会社インテージ ・ IT・ソフトウェア ・ 従業員36名(移転時点)

調査会社インテージの西日本支社は従業員36名。それまで営業が顧客を訪ねる立場だったが、海外事業と商品開発戦略の拠点として、顧客が足を運びたくなるオフィスをつくろうとした。最新技術とICTを組み込んだインタビュールーム、ラウンジとセミナー機能を備えたインサイト・ラボを構築し、オリエンテーションから着工までは2か月未満。顧客満足度は77%から93%に上がり、顧客がオフィスへの来訪を希望するようになって、議論の場で問題解決が速くなり、新規顧客の獲得にもつながった。オフィスは社内だけでなく、社外にも効くと示す締めの1本。

顧客満足度
77%→93%
顧客満足度向上と問題解決スピード向上を実現するお客様視点のオフィス構築この事例の詳細を読む →

床と、昼ごはんと、フロアの数

10本を並べると、空間づくりの成果は3つの場所に集中している。ひとつは床と壁。日本ツクリダスの白い床、Agoopのホワイトボードの壁面、中野電工の半個室がそれだ。ひとつは食べる場所。TVerの社食と、タケエイの50㎡の食堂。もうひとつはフロアの数で、日鉄興和不動産は9フロアを2フロアに、日本ジッパーチュービングは2工場を1工場にした。どれも高価なシステムではなく、人が毎日身体で触れる場所だ。もうひとつの共通項は、決め方にある。Agoopはカードで、中野電工はヒアリングで、日本ジッパーチュービングは社内公募で、YSK e-comは見学で、社員を設計に加えている。空間の効果は、使う人が決めた分だけ出る。測り方はコニカミノルタが示している。移転前に満足度を測っておき、移転後に同じ質問をする。次の一歩は、自社の床の色、昼ごはんの選択肢、フロアの数を、採用と出社の数字と並べて眺めること。この10本の型は、そこから当てはまる。

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