
売れた数だけ、仕事が増える。
EC運営の裏側を仕組みで解いた事例10選
注文が増えるのは、うれしい悲鳴では済まない。FAXの受注控えが積み上がり、発送は1日数百件、不在の再配達が膨らみ、売れた分だけ返品が増える。セキュリティを強めれば、今度は2割の客が買えずに帰る——ECの成長は、裏側の仕事の成長でもある。売れた数だけ増える仕事を数字で減らした10の事例を、受注・配送・返品・売る手前・問い合わせの順に並べた。最後は、1日1時間の作業で月商200万円を回す個人ショップの話で終わる。
選定の基準と範囲:当サイトの掲載事例3,072件のうち、EC・通販の運営業務(受注・出荷・配送・返品・決済・問い合わせ・サイト改善)の改善を扱い、数値成果が公開されている事例から、業務の局面が重ならないように編集部が10本を選んだ(同一ベンダーは最大2本まで。別テーマの10選で取り上げた事例は除く)。順位ではなく並列の「選」であり、製品の優劣や市場の代表性を示すものではない。数字はいずれも各事例の公開情報に記載のもので、対象・期間は各事例記事から確認できる。
登場サービスの提供企業へ、編集部がまとめてお取り次ぎします(次の画面で選択を外せます)。
01注文が急増しても回る仕組みで、工数が40%減った
株式会社ジェイアール東日本企画 ・ その他 ・ クライアント3000社以上
ジェイアール東日本企画の応援広告サービスでは、受注から広告掲出までの数ヶ月間にファン・芸能事務所・媒体社との往復が発生し、顧客情報は手作業で転記、情報は複数ツールに散在していた。ECサイトを開いた途端に注文が急増し、既存運用は限界に。注文・決済・やりとりを1つの基盤に集約して工数を40%削減した。「売れたら破綻する運用」を売れる前提の運用に組み替えた、この10選の入口になる1本。
注文急増でも応援広告の受注から掲出までを一元管理、工数40%削減を実現この事例の詳細を読む →02FAX受注の受領漏れがなくなり、確認業務が年60時間消えた
多生堂 ・ 小売・EC
商社の多生堂では、月100件の注文がFAXで届き、受領漏れがそのまま失注につながるため、確認の電話とリファックスが日常業務になっていた。Web受注に切り替えて注文データを顧客と共有し、受領漏れは解消、確認業務は年間60時間の削減。ECの第一歩が「売り場を作ること」ではなく「注文を落とさないこと」だと分かる1本。
FAX受領確認業務の廃止で年間60時間の業務削減を実現この事例の詳細を読む →031日数百件を出荷しても、瓶の破損は月1〜3件になった
久米仙酒造株式会社 ・ 飲食・食品 ・ 中堅企業
沖縄から泡盛・ウイスキーを全国へ販売する久米仙酒造では、EC成長で集荷回数が増え、発送スタッフの負担と瓶製品の破損リスクが膨らんでいた。集荷体制を拠点局からの大型車両に切り替え、発送スケジュールに合わせた柔軟な集荷に。繁忙期1日数百件の出荷でも破損は月1〜3件程度、納期は最短中2日。「売れるほど壊れる」を物流の設計で止めた1本。
04「不在だから届かない」を、受け取り方の選択肢で減らした
株式会社Rise UP ・ 小売・EC ・ 会員数224万人
会員224万人のカラーコンタクト通販Rise UPでは、出荷数の増加とともに不在再配達が積み上がり、顧客・荷主・配送業者の全員が損をしていた。郵便受けに入る配送への切り替えを進め、コンビニ・郵便局受け取りや玄関前など指定場所への配達を追加。指定場所ダイレクトは郵便受け配達を除く荷物の2割弱で使われるまでになった。「届ける」の最後の1メートルを解いた1本。
05売れるほど増えていた返品が、5%から3%になった
株式会社ジェイアックスコーポレーション ・ 小売・EC
ファッションブランドを展開するジェイアックスコーポレーションでは、ECが好調になるほど返品・交換が増え、顧客満足度の低下が新規獲得の足を引っ張り始めていた。購入前に自分に合うサイズを確認できるサービスを入れて、返品率は5%から3%に。返品は「売れたことの副作用」ではなく「売る前の情報不足」だった、と示す1本。
返品率を5%から3%に削減、顧客満足度向上でリピート獲得を実現この事例の詳細を読む →06試着できない不安を消したら、CVRが3倍になった
株式会社アルペン ・ 小売・EC ・ 従業員数不明
スポーツ用品大手アルペンのECでは、試着ができないためサイズ選びの失敗と返品・交換が多発し、メーカーごとにサイズ表記が違うことが購買意欲を削いでいた。過去の購入履歴からサイズを推奨する仕組みでEC上に試着に近い環境を作り、CVRは3倍に改善、EC会員は700万人に。売上の伸びしろが「商品」ではなく「不安」の側にあった1本。
アルペンがunisize導入でECコンバージョン率を3倍に改善、会員数700万人達成この事例の詳細を読む →07セキュリティを強めたら2割が買えなくなった——AIで両立させた
株式会社ゴルフ・ドゥ ・ 小売・EC ・ 従業員100〜1,000人未満
中古ゴルフ用品を扱うゴルフ・ドゥのECでは、高額で換金性の高い商材ゆえに不正対策が必須だが、本人認証を全取引に課したところ、使い方が分からない客のかご落ちが約20%発生した。AI不正検知で疑わしい取引だけに認証を出す方式に変え、決済完了率は80%以上、認証表示は5分の1に、不正被害は毎月数十万円を回避。安全と売上を交換しない道を示す1本。
08ばらばらだった問い合わせ窓口を統合して、月58時間が消えた
株式会社Mizkan ・ 飲食・食品 ・ 約3,600名(グループ全体)
グループ約3,600名のMizkanでは、お客様相談センター・土日緊急窓口・通販ブランドZENBのコールセンターがそれぞれ別に顧客情報を管理し、メール承認などの社内手続きも重かった。全チャネルを1つの基盤に統合してECの購買データも連携させ、メール承認業務は月58時間削減、代品の誤配送などのミスは激減。問い合わせの散在が誤配送まで生んでいた、と気づかせる1本。
Agentforce ServiceとAmazon Connectの連携でメール承認業務を月58時間削減、問い合わせチャネルを統合この事例の詳細を読む →09小さな改善を3年続けたら、年2.28億円になった
ブックオフコーポレーション株式会社 ・ 小売・EC ・ グループ全体で国内外に約800店舗
年間約9,000万人が使うブックオフオンラインでは、ユーザーの行動が見えず、どこを直せばよいかが分からなかった。ヒートマップでクリックと離脱を可視化し、毎月のページ改善とABテストを3年間積み重ねる「チリツモ改善」で、主導線の遷移率は0.85%から1.64%へ約2倍、年間売上効果は2.28億円。派手な機能ではなく、直し続ける体制が数字を作った1本。
ヒートマップ継続活用による「チリツモ改善」で年間売上効果2.28億円、主導線遷移率2倍に改善この事例の詳細を読む →101日1時間の作業で、月商200万円が回るようになった
導入企業(非公開) ・ 小売・EC ・ 個人事業主
個人経営のネットショップでは、商材が少なくアクセスが集まらず、受注データの手入力が運営を圧迫していた。商材提供サービスで20万商材から自店に合う商品を拡充し、CSV一括発注とメールテンプレートで運営を仕組み化。アクセスは1日500件になり、半年で月商200万円、実作業は1日1時間未満に。売れても仕事が増えない設計は個人でも作れる——締めの1本。
売れた数だけ増える仕事を、仕組みに渡す
10本を並べると、ECの裏側の仕事に共通する性質が見える——売れた数に比例して増えることだ。受注の確認(多生堂・ジェイアール東日本企画)、発送と再配達(久米仙酒造・Rise UP)、返品(ジェイアックスコーポレーション)、問い合わせ(Mizkan)。人手のまま成長すれば、その分がそのまま残業と機会損失になる。仕組みに渡せば、売れても仕事は増えない——1日1時間で月商200万円を回す個人ショップは、その極端な証明だ。もうひとつの発見は「売る前」にも裏側があること。サイズへの不安(アルペン)、認証でのかご落ち(ゴルフ・ドゥ)、押されないボタン(ブックオフオンライン)は、来ていたはずの売上が静かに漏れていた場所だった。次の一歩は、自店の業務を「注文が2倍になったら破綻する順」に並べること。比例で増える仕事から先に、この10本の型で仕組みに渡す。
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