事例解体新書#004
#手作業の転記|当サイト掲載 413件 ・ 13業種

「転記をなくしたい」に、
会社はどんな手を打ったのか

タイムカードの時刻をExcelに打ち直す。届いた請求書をシステムに入力する。あるシステムの画面を見ながら、別のシステムに同じ数字を入れる——「手作業の転記」は、当サイトでもっとも多くの事例に付く悩みのひとつだ。そして事例を並べて読むと、会社たちが打った手は一種類ではない。業務のどこを変えたかで分けると、道はおおまかに4本ある。転記に悩む人が「自社はどの道から調べるか」を考えるための地図として、代表的な事例とともに整理した。

この悩みの輪郭

はじめに、この記事で扱う範囲を断っておく。ここで「転記」と呼ぶのは、ある場所にある情報を、人が別の場所へ書き写す・打ち直す作業のことだ。手書きの記録をExcelへ、紙の伝票をシステムへ、システムAからシステムBへ——形は違っても、「情報はすでにどこかにあるのに、人がもう一度入力している」点が共通している。同じタグが付く事例の中には、給与明細の印刷・封入や会議資料の配布といった「配る手作業」を解いたものもあるが、それは別の悩みとして、この地図では扱わない。また、以下のルート分けは掲載事例を読んだ編集部の整理であり、世の中の選択肢を網羅したものではない。

手の入れ方の地図

ルート1最初から、データで生まれるようにする

転記の出発点が手書きやアナログの記録なら、そもそも最初からデータとして生まれるように発生源を変える道がある。タイムカードの打刻を手で集計していた林総事は、打刻データを自動集計するタイムレコーダーに替えて給与計算を3日から1日にした。飲食業の梅林も、打刻時刻のExcel手入力をやめて打刻自体をデータ化した。電気工事の成瀬電気は、照度測定を「測定者が読み上げ、記録係が手書きする」2名体制から、Bluetooth連携の測定器で測定データが帳票に自動で入る形に変えた。変わるのは、記録という仕事の最初の一手である。

ルート2届いた紙を、機械に読ませる

紙が社外から届く場合、発生源は簡単には変えられない。そこで、届いた紙のデータ化を機械に渡す道がある。年間30万枚の紙の請求書を抱えていた日清食品ホールディングスは、AI-OCRで読み取って経費システムに取り込む形にした。経費精算システムを提供するSBIビジネス・ソリューションズは、領収書・請求書の読み取り機能を組み込んで入力時間を約10分の1にしている。グループ44社の経理業務を受託する阪急アクトフォーも、請求書の読み取り自動化から入った。紙が来ること自体は受け入れ、その後の「読む・打つ」を変える道である。

ルート3システムの間を、ロボットに運ばせる

元も先もすでにデジタルなのに、間を人が運んでいる転記がある。ここを変えるのがRPAや自動連携の道だ。年間約22万件の伝票を処理する早稲田大学は、Excel伝票をRPAが自動検証してERPに登録する仕組みで年間約4万時間を節約した。在宅医療の浅川学園台在宅クリニックでは、院長が自らRPAを組んで電子カルテと連携させ、休日出勤で処理していた書類作成を月13時間から約3時間にした。住友生命は、アンケート回答データの基幹システムへの自動連携で年間約420時間の加工作業を削減している。既存のシステムはそのまま残し、間の橋だけを機械に架け替える道である。

ルート4入力先を、一つにする

転記が生まれる根本の原因が「同じ情報の置き場所が複数ある」ことなら、置き場所を一つに載せ替える道がある。Netflixは11個に分かれていたバックオフィスシステムを1つの基盤に統一した。人事評価の配布・回収・集計に年間約800時間かけていた茨城トヨペットは、人材データを一元管理するシステムに移して約200時間にした。購買と会計が別システムでデータの再入力が必要だった食品メーカーW社は、購入依頼から発注・検収までを一元管理に載せ替え、月次決算を1週間から2日にしている。効果の範囲が最も広い一方、変える範囲も最も大きい道である。

この4本は排他の選択肢ではない。たとえば阪急アクトフォーは読み取りの自動化(ルート2)と経費システムへの連携(ルート3)を組み合わせているし、発生源を変えつつ(ルート1)給与ソフトへ自動連携する(ルート3)勤怠の事例も多い。また、どのルートが優れているかは事例からは言えない——変えられる範囲と、転記がどこで生まれているかが会社ごとに違うからだ。

参考:#手作業の転記 が付く当サイト掲載事例413件の、解き方カテゴリの内訳。 掲載データの構成であり、市場での分布や各ルートの優劣を示すものではない。

業務SaaS132AI・データ分析26人事・労務19コンサル・支援19セキュリティ17RPA・業務自動化13

自社ではどこから調べるか

1.

写している元と先を、書き出す

自社のどの転記をなくしたいのか、元(手書き・紙・システムA)と先(Excel・システムB)を具体的に書き出す。元がアナログならルート1か2、元も先もシステムならルート3、先が複数あるならルート4が、まず調べる候補になる。

2.

その情報は、誰が生んでいるかを確かめる

自社の中で生まれる情報(打刻、測定、記録)なら、発生源から変えるルート1を検討できる。社外から届くもの(請求書、申込書)は相手を変えにくいためルート2が現実的になりやすいが、取引先に電子での受け渡しを依頼できるかどうかも、あわせて確かめる価値がある。

3.

転記の前後に残る工程も見る

転記だけを消しても、確認・承認・照合の工程は残ることがある。参考にする事例の成果の数字が「どの工程の、誰の時間か」を確認し、自社で減らしたい時間と同じ場所かを見る。

4.

変えられる範囲の合意を数える

ルート1〜3は既存の仕組みを残したまま入れられることが多く、ルート4は業務の載せ替えを伴うぶん、巻き込む部門や関係者が増える。どこまでの変更なら社内(と取引先)の合意が取れるかが、地図のどこから歩き始めるかを決める。

4本のルートに共通していたのは、最初の一歩がツール選びではなかったことだ。どの事例も、まず「どこで・誰が・何を写しているか」が具体的に語られている。転記は目立たない作業で、数えるまでは総量が見えない。だからこの地図の使い方は、ルートを選ぶ前に、自社の転記を数えるところから始まる——元と先を書き出せた転記は、この4本のどれかで、すでに誰かが解いている可能性が高い。

この記事に登場したサービス

記事で取り上げた事例で導入されていたサービスの一覧です(掲載データに基づく表記で、優劣や推奨を示すものではありません)。

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