
経理・バックオフィスの仕事を、AIはどこまで肩代わりできるのか。
事例10選
請求書を突き合わせる。領収書を確認する。契約書を台帳に写す。決算の数字を照合する——バックオフィスの仕事は、正確さが命の「確認と転記」でできている。ここにAIを入れた会社が、何をどれだけ手放せたのか。グループ経理の標準化から、従業員18名の経費精算、契約書の台帳づくり、月次決算のデータ照合、会計事務所の紙処理まで、規模も業務も違う10本を成果の数字で並べた。共通するのは、AIが肩代わりしたのは判断ではなく、判断の手前にある「確認の手数」だということだ。
選定の基準と範囲:当サイトの掲載事例3,072件のうち、経理・法務・人事などバックオフィス業務にAI(AI-OCR・AI照合・自動抽出等)を使い、数値成果が公開されている16件から、業務が重ならないように編集部が10本を選んだ(同一ベンダーは最大3本まで)。順位ではなく並列の「選」であり、製品の優劣や市場の代表性を示すものではない。数字はいずれも各事例の公開情報に記載のもので、対象・期間は各事例記事から確認できる。別テーマの10選(紙を読むAI・答えるAI)で取り上げた事例は除いている。
登場サービスの提供企業へ、編集部がまとめてお取り次ぎします(次の画面で選択を外せます)。
01グループの会計処理が、7割まで自動で流れるようになった
味の素フィナンシャル・ソリューションズ株式会社 ・ 飲食・食品
味の素フィナンシャル・ソリューションズでは、グループ各社でシステムも使い方もばらばらで、BPOに委託した会計業務も手作業のデータ登録が中心だった。AI-OCRで請求書を読み込み経費システムと会計システムを自動連携させ、請求書処理の自動化率は約7割、BPO作業時間は約30%削減。インボイス制度対応と標準化を同時に進めた、グループ経理の代表例。
0244社分の経理を受託する現場が、読み取りを機械に渡した
株式会社阪急アクトフォー(エイチ・ツー・オー リテイリングのグループ企業向けシェアードサービス提供) ・ 小売・EC ・ グループ46社、経理業務受託44社、人事業務受託35社
エイチ・ツー・オー リテイリンググループの阪急アクトフォーは、グループ44社の経理業務を受託し、紙の請求書の入力と印鑑承認が重くのしかかっていた。AI-OCRで請求書の鑑と明細の読み取りを自動化し、帳票定義なしで識字率7割強からスタート。シェアードサービスという「経理が本業」の現場が選んだ入り方として参考になる1本。
エイチ・ツー・オー リテイリング、AI-OCR「Remota」で請求書処理を電子化・自動化この事例の詳細を読む →03経費の照合が60%減り、2割は検印まで自動になった
BIPROGY株式会社 ・ IT・ソフトウェア
BIPROGYでは、コロナ収束後の経費処理件数の増加と、電子帳簿保存法改正への対応が迫っていた。AI-OCRとRPAを組み合わせて経理側の突合処理を自動化し、照合作業を60%削減、全体の20%は検印まで自動化。「読む」の次にある「照らして確かめ、承認する」まで踏み込んだ1本。
BIPROGY株式会社、AI-OCRとRPAで経理の突合作業を60%削減し、ビジネス支援に注力できる体制へこの事例の詳細を読む →04月500件の交通費精算が、ほぼ自動で通るようになった
株式会社アルク ・ その他 ・ 従業員約800名(アルバイト含む)
従業員約800名のアルクでは、Excelと手書きが混在する申請フォーマットで月500件超の交通費精算を1〜2名が処理し、確認と突合に追われていた。ICカード連携とAI-OCRの経費精算に切り替え、交通費精算はほぼ自動化、経理業務量は1/5以下になる見込みに。確認の手数がどこまで消えるかを示す1本。
05従業員18名の会社でも、申請の時間が1/3になった
ハタ コンサルタント株式会社 ・ 建設・不動産 ・ 従業員18名
建設コンサルのハタ コンサルタントでは、Excel手作業の申請と領収書のスキャン・PDF保存に半日を要し、現金精算も煩雑だった。領収書をAIに読ませる経費精算に変えて申請作業は1/3に。バックオフィスAIは大企業のものと思われがちだが、18名の会社で成立している最小規模の実例。
06請求書の読み込み精度100%で、経理がテレワークになった
右の字トレーディング株式会社 ・ その他 ・ 従業員70名
商社の右の字トレーディングでは、毎月の請求関連業務が紙に縛られ、経理部門のテレワークも電子帳簿保存法対応も進まなかった。AI-OCR・RPA・電子保存基盤を組み合わせ、請求書の読み込み精度は100%に到達。読み取りの自動化が、在宅勤務と法対応という別の課題まで一緒に解いた1本。
07契約書10倍の入力が、数秒のチェックになった
株式会社find ・ その他 ・ 51~300名
事業拡大で契約書が最大10倍に増えたfindでは、ドライブと手作業の台帳管理が限界を迎えていた。AIが契約書から情報を抽出して台帳を自動作成する仕組みに変え、1件ごとの入力作業は数秒の確認だけに。経理の隣にある法務バックオフィスでも、AIの肩代わりが同じ構図で効くことを示す1本。
CloudSignで契約書管理を自動化、月10倍の入力作業を数秒のチェックに削減この事例の詳細を読む →08毎日10件の契約が、台帳に自動で載るようになった
フィードバイエックス株式会社 ・ 医療・介護 ・ 従業員51~300名
年間数千件の契約をスプレッドシートで管理していたフィードバイエックスでは、記入漏れとステータス追跡が慢性的な課題だった。AIが契約書の内容を読み込んで必要情報を台帳に自動登録する形にし、契約条件の記入作業は完全に不要に。「写し忘れ」というバックオフィス特有のリスクごと消した1本。
医療機器企業がGoogle スプレッドシート による手作業でのアナログ契約管理からCloudSign へ移行し、年間数千件の契約処理を効率化この事例の詳細を読む →09決算の照合が、5秒で終わるようになった
レンジャーシステムズ株式会社 ・ IT・ソフトウェア ・ 従業員21~50名
レンジャーシステムズでは、Excel依存の月次決算に2〜3カ月を要し、販売管理と会計システムのデータ不整合の確認に時間を取られていた。会計システムを軸にデータを連携させ、AIによる自動チェックを実装して、照合・確認作業は5〜10秒に。決算という「締めの確認」までAIが入り込んだ1本。
10会計事務所の紙仕事が減って、顧客が1.4倍に増えた
株式会社Beso ・ IT・ソフトウェア
会計支援を手がけるBesoでは、クライアントから届く紙の領収書・納品書の回収・整理・スキャンに工数を奪われ、属人化も進んでいた。AI-OCRを組み込んだバックオフィス支援体制に切り替えて人件費を約30%削減し、対応クライアント数は約1.4倍に。減らした手数を「受けられる仕事の量」に変えた、締めの1本。
AIが持っていったのは、判断ではなく確認だった
10本を並べて見えるのは、AIが肩代わりした仕事の正体だ。読む(味の素FS・阪急アクトフォー)、照らす(BIPROGY・レンジャーシステムズ)、写す(find・フィードバイエックス)、確かめる(アルク・ハタ コンサルタント)——どれも判断そのものではなく、判断の手前で人の時間を食っていた確認の手数である。そして効果は経理にとどまらない。テレワークと法対応(右の字トレーディング)、受注余力(Beso)と、隣の課題まで一緒に動いた事例が目立つ。規模の壁も思ったより低い——18名の会社から数万人のグループまで、同じ構図が成立している。次の一歩は、自社のバックオフィスで「人が確認している場面」を数えること。確認の回数が多い業務から順に、この10本のどれかが当てはまるはずだ。
この記事に登場したサービス
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