
地球のためじゃなくても、いい。
脱炭素・省エネで数字を出した事例10選
「脱炭素への対応を」——取引先や金融機関からの要請は年々増えるが、現場にその余裕はない。だが実際に成果を出した10の事例を並べて読むと、どれも理念や我慢からは始まっていない。始まりは電気代・水道代・紙代・廃棄コストの削減で、CO2の数字はその結果としてついてくる。遮熱で電気代3割減、シャワーの節水で年135万円、買う電気を8割減らした従業員30名の会社。測る・入れない・創る・減らすの順に並べ、最後は廃棄パン700トンの削減を事業そのものに変えた話で終わる。
選定の基準と範囲:当サイトの掲載事例3,654件のうち、CO2削減・省エネ・再エネ・資源削減(紙・水・食品ロス)の取り組みで数値成果が公開されている事例から、局面(発電最適化・設備の運転改善・遮熱・節水・自家発電・再エネ設備の保守・ペーパーレス・帳票電子化・食品ロス)が重ならないように編集部が10本を選んだ(同一ベンダーは最大3本まで。別テーマの10選で取り上げた事例は除く。導入企業が匿名の事例を1本含む。予測値の数字はその旨を本文に明示)。順位ではなく並列の「選」であり、製品の優劣や市場の代表性を示すものではない。数字はいずれも各事例の公開情報に記載のもので、対象・期間は各事例記事から確認できる。
登場サービスの提供企業へ、編集部がまとめてお取り次ぎします(次の画面で選択を外せます)。
01AIがダムの水を無駄なく使い、CO2が年1,400トン減った
中国電力株式会社 ・ エネルギー・環境 ・ 従業員4564人
中国電力の水力発電では、流域の降水量を簡易的に予測していたため実際のダム流入量とずれ、細かな発電計画が立てられず、水は使われないまま越流していた。AIで10日先の流入量を高精度に予測し、30分単位の発電計画を最適化。あふれていた水は年間約600万立方メートル(240万kWh相当)減り、火力発電の代替でCO2は年間1,400トン削減、経済効果は年数千万円オーダーの見込み。脱炭素の第一歩が「精密に測ること」だと示す、最初の1本。
AIによる水力発電計画の最適化で年間1400トンのCO2削減を実現この事例の詳細を読む →02コンプレッサーの運転を見える化して、消費電力が18.8%減った
B社(食品製造業) ・ 飲食・食品
この食品製造工場では、8台のコンプレッサーが屋外の暑さで頻繁に停止し、生産の中断と無駄な電力消費が続いていた。点検時期の管理も複雑で追いつかない。最新機4台への集約と台数制御に加え、クラウドで稼働状況を24時間365日監視する体制に変えて、消費電力は18.8%削減。工場の電気の大口——圧縮空気——は、まず運転の実態を見えるようにするだけで削れると示す1本。
03屋根の熱を入れないだけで、電気代が3割減った
シチズン生活協同組合ほか複数 ・ 製造業
シチズン生活協同組合をはじめ複数の工場・倉庫では、金属屋根の屋根裏温度が70℃以上に達し、熱中症のリスクと空調コスト、製品品質の低下を抱えていた。屋根に遮熱システムを施工して熱の侵入を断ち、屋根裏は外気温と同等、室内は2〜5℃低下。空調の設定温度は23℃から28℃へ引き上げられるようになり、電気代は3割削減。設備を増やすのではなく「熱を入れない」——省エネの順序を教える1本。
冷えルーフ導入で屋根裏温度を70℃から外気温に低減、空調費削減と作業環境改善を実現この事例の詳細を読む →04シャワーの流量を絞って、年135万円の削減を見込む
扇野の里 扇芳閣 ・ その他
年間約9万人が訪れる高台の温泉ホテル・扇芳閣では、大浴場のシャワーの水使用量に加え、高低差36メートルを汲み上げる加圧ポンプの電力が経費を圧迫していた。他社の節水提案は高額で断念していたが、快適性を保てる流量制限装置を選んで導入。水道料金・昇温費用・ポンプ電力を合わせ、年間135万円の費用削減を見込む(予測値)。エネルギーだけでなく「水」も削減対象だと気づかせる1本。
ホテルのシャワー節水で年間135万円以上の費用削減を実現この事例の詳細を読む →05新社屋の屋上が発電所になり、CO2が年38トン減った
株式会社ホロン ・ 製造業
半導体検査装置メーカーのホロンは、新社屋の建設にあたって環境配慮とBCP対策の両立を求めた。屋上に太陽光パネル224枚(68.32kW)と産業用蓄電池(32kWh)を設置して自家消費に回し、年間発電量は75,040kWh、CO2削減は年間38,421kg。災害時にはサーバーのバックアップ電源と従業員の避難場所を兼ねる。「環境投資」と「事業継続投資」を1つの設備で済ませた1本。
新設工場にBCP対策として太陽光発電と産業用蓄電池を導入し、電気代削減とCO2削減を実現この事例の詳細を読む →06従業員30名の会社が、買う電気を8割減らした
大里綜合管理株式会社 ・ その他 ・ 従業員30名程度
不動産管理の大里綜合管理(従業員30名程度)は、東日本大震災を機に電力の自立を志し、千葉の台風停電で必要性を再確認した。100項目以上の節電で使用量を約3割減らした上で、本社と倉庫に太陽光発電(計30kW)と蓄電池12台、EVとV2H設備を段階的に導入。外部から買う電気は当初比8割減、全体の2割まで抑えた。中小企業のエネルギー自立が「節電→創電→貯電」の順で積み上がることを示す1本。
東日本大震災をきっかけに、太陽光発電と蓄電池でオフグリッド化を実現この事例の詳細を読む →07太陽光発電所450カ所の保守が一元化され、クレームが半減した
株式会社親広産業 ・ エネルギー・環境 ・ 従業員数不明
親広産業は450カ所以上の太陽光発電所のメンテナンスを担うが、作業履歴年2,000件超がストレージ・グループウェア・アプリに散らばり、協力会社の報告もばらつき、土地所有者から「草が伸びている」と指摘される状態だった。情報を1つの施工管理基盤に集約し、作業指示から写真報告までを統一。クレームは40〜50%減り、パネル洗浄の確認時間は半分に。再エネは「作って終わり」ではなく、支える運用が本番だと示す1本。
450カ所以上の太陽光発電所のメンテナンス管理を一元化、クレームを40~50%削減この事例の詳細を読む →08市役所の会議から、紙が年48,000枚消えた
本庄市役所 ・ 自治体・公共
本庄市役所では、庁議で多いときに3,000枚以上の資料を印刷しており、総合振興計画に掲げた電子自治体の推進と紙資源の削減が課題だった。体験会と選定委員会を経て使いやすさ重視のペーパーレス会議システムを導入し、庁議・経営戦略会議で運用。年間目標2万枚を半年で超え、紙削減は年間48,000枚、会議準備は約5分で済むように。行政の脱炭素が「まず自分の会議室から」始まった1本。
09137社へ配っていた月3万枚の帳票が、電子化された
株式会社ヤクルト本社 ・ 飲食・食品 ・ 従業員2,978名
ヤクルト本社では、老朽化したメインフレームからの移行にあわせ、業務ごとにばらばらだった帳票出力が課題になっていた。137の販売会社へ配布する帳票は月約3万枚。統合帳票管理システムを構築して電子帳票へ切り替え、印刷関連コストを削減した。紙の削減は「環境施策」としてではなく、システム刷新の設計に組み込んだときに一気に進む——帳票という紙の本丸を扱った1本。
10捨てられるはずのパン700トンが、事業になった
合同会社クアッガ ・ 飲食・食品
全国のパン屋では、売れ残ったパンが平均5〜10%廃棄され、天候や季節で増減する。クアッガはこのロスパンとパン好きのユーザーをつなぐ通販サービス「rebake」を5店舗から立ち上げ、約5年で参加800店舗以上・ユーザー20万人に。削減したロスパンは700トンを超え、購入者のリピーター率は約8割。コスト削減の先にある最終形——廃棄そのものを売上に変える——を示す、締めの1本。
食品ロス削減型通販サイトrebakeで廃棄パン700t削減、リピーター率8割達成この事例の詳細を読む →CO2の数字は、経費削減の副産物として出てくる
10本を並べると、打ち手は4つに整理できる。測って最適化する(中国電力・食品工場)——見えるようになった瞬間に無駄は削れる。入れない・出さない(遮熱屋根・扇芳閣の節水)——設備を増やさず、熱と水の出入りを絞る。創って貯める(ホロン・大里綜合管理)——BCPと相乗りさせれば投資判断は通りやすく、作った後の保守も含めて設計する(親広産業)。そして紙とロスを減らす(本庄市役所・ヤクルト本社・rebake)。共通するのは、どの現場も「環境のため」を最初の理由にしていないことだ。電気代・水道代・紙代・廃棄コスト——先に財布が軽くなるから、取り組みが続く。そして続いた先で、rebakeのように削減自体が事業になることもある。次の一歩は、自社の電気・水道・紙・廃棄の請求書を12ヶ月分並べることだ。金額の大きい順が、そのまま脱炭素の着手順になる。CO2の報告書は、その後からでいい。
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