事例解体新書#002
業務効率・工数削減|建設・不動産|従業員45名

月300枚の請求書と、
現場監督の「消えた3日間」

——同じ請求書の電子化で、なぜこの事例では現場の時間が戻ったのか

請求書業務の改善事例を並べて読むと、成果の主語はたいてい経理だ。処理の工数、ペーパーレス化率、保管の手間。ところが佐藤工業株式会社の事例では、経理の月50時間削減と並んで、現場監督の査定業務が「3〜5日からほぼ半日に」という数字が出てくる。同じ請求書の電子化なのに、なぜこの事例では現場の時間が戻ったのか。同じ悩みを扱う周囲の事例と照らしながら読む。

同じ課題への、いくつかの道

1届いた紙を、機械に読ませる

日清食品ホールディングスは、年間30万枚の紙の請求書に対してAI-OCRと経費システムを組み合わせ、受領から入力・承認・保管までをペーパーレス化した。グループ44社の経理業務を受託する阪急アクトフォーも、請求書の読み取り自動化から入った。どちらの事例でも、変わったのは主に、請求書が届いた後の入力・確認・承認という処理の工程である。

2書類の通り道ごと、載せ替える

佐藤工業が採ったのはこちらの道だ。請求書の受領から査定、承認、保管までの一連の業務をデジタル化し、クラウド上で一元管理した。同じ建設業のカスケホームも、問い合わせから見積もり、現場管理、入金処理までを一つの仕組みに載せ替えている。変わるのは特定の工程の速さではなく、書類と情報が通る道筋そのものである。

この2つは排他の二択ではない。読み取りの自動化と流れの載せ替えを併用する会社もありうるし、掲載事例にはここに挙げた以外の手の入れ方もある。ここでは、冒頭の問い——なぜこの事例では現場の時間が戻ったのか——を読むために、対照になる道を並べた。

参考:佐藤工業株式会社と悩みタグを共有する当サイト掲載事例418件の、解き方カテゴリの内訳。 掲載データの構成であり、市場での分布や各解決策の優劣を示すものではない。

業務SaaS178人事・労務15AI・データ分析14基幹・業務システム13コンサル・支援10クラウド・インフラ9

今回注目する会社

佐藤工業株式会社建設・不動産 ・ 従業員45名

導入:ANDPAD請求管理andpad

毎月300枚の請求書が紙で届く。経理担当が振り分けとファイリングを行い、現場監督が査定し、経理が検査する——この一連の業務に時間を要していた。特に現場監督は、遠い現場から往復2時間かけて紙を取りに行く必要があり、査定業務に3〜5日かかっていた。導入したのはANDPAD請求管理。受領から査定、承認、保管までをデジタル化し、クラウド上で一元管理した。結果として、経理部門は月50時間の削減、現場監督の査定業務は3〜5日からほぼ半日に。協力会社の利用率は8割を超えたと記されている。

取り組みの全体像・成果の数字・導入の経緯は事例記事に詳しい。本稿では、事例群と照らして見える特徴を読む。

この事例は、どこが特徴的か

※以下は、公開事例の記述と当サイトの掲載データから編集部が読み解いた「読み」です。 事実と解釈の区別は本文中に示します。

読み1成果の数字に、現場監督が出てくる

道1の事例で成果として語られるのは、処理工数や識字率——請求書を処理する側の数字だ(日清食品HDの年間約2万4千時間という削減工数も、部門ごとの内訳までは本文から確認できない)。佐藤工業の事例では、経理の月50時間と並んで「現場監督の査定業務が3〜5日からほぼ半日」という、現場の役職名つきの数字が成果の中心にある。今回参照した請求書業務の事例の中で、成果が現場の時間で語られていたのはこの事例だけだった。

読み2課題文に、往復2時間が書いてある

佐藤工業の課題は、処理の遅さだけではない。「現場監督は遠い現場から往復2時間かけて取りに行く必要があり」と本文にある。紙が本社の一カ所にしかないことが、現場の時間を奪っていた。施策はクラウドでの一元管理——つまり、紙のある場所へ行かなくても査定ができるようにした。現場の時間が戻ったのは、読み取りが速くなったからではなく、紙の置き場所への移動が要らなくなったからだと読める。

読み3違いは、流れの上に誰がいたか

対比だけでは見えない共通点がある。日清食品HDも「受領から入力・承認・保管まで」を変えており、流れ全体に手を入れた点は佐藤工業と同じだ。違うのは、その流れの上にいた人である。日清の記述で流れを構成するのは入力・承認・保管という処理の工程。佐藤工業の流れには、経理と経理のあいだに「現場監督による査定」が挟まっており、しかもその監督は別の場所にいた。同じ「流れの電子化」でも、流れの上にいる人の分だけ時間が戻る——2つの事例の並びからは、そう読める。

どんな会社の参考になるか

この事例が参考になるかどうかは、「建設業だから」という業種の一致だけでは決まらない、と編集部は読む。確かめたいのは次の条件だ。

書類の流れが、部門や場所をまたいでいるか

受領する人と、内容を判断する人が別の部門・別の場所にいるか。流れが1部門で完結しているなら、処理工程の自動化(道1)の事例のほうが状況が近い可能性がある。

失われている時間は、処理か、移動と待ちか

佐藤工業で戻った現場の時間は、往復2時間の移動と査定の待ちだった。入力や確認の速さより、書類のある場所へ行くこと・回ってくるのを待つことが重いなら、この事例の構図に近い。

流れを載せ替えるとき、社外を巻き込めるか

この事例の成果には「協力会社の利用率8割超」がある。つまり施策は社内で完結しておらず、請求書を出す側の協力会社にも使ってもらう必要があった。流れの載せ替えは、流れの上にいる社外の関係者の分だけ、調整の相手が増える。

条件が似ていても、同じ成果や製品の適合が保証されるわけではない。佐藤工業が他の選択肢と比較検討したのか、なぜこの製品を選んだのかは公開事例には書かれていない。費用、既存の会計システムとの連携、協力会社への展開の進め方も公開情報からは分からない。検討する場合は、この点を一次情報や商談で確認することになる。

自社と照らす

  • 1.その書類の一生(受領・確認・承認・保管)のうち、最も時間が失われている工程はどこか。
  • 2.その時間を失っているのは誰か——経理か、現場か、その両方か。
  • 3.移動や待ちが原因なら、何がその移動を生んでいるか。紙の置き場所か、押印か、原本の規程か。
  • 4.流れを載せ替えるとしたら、巻き込む必要があるのは誰か。社内だけで完結するか、取引先の協力が要るか。

冒頭の問いに戻る。同じ請求書の電子化で成果の出る場所が違ったのは、変えた流れの上に誰がいたかの違いだと読める。処理の工程を変えれば処理する人の時間が、現場をまたぐ流れを変えれば現場の時間が戻る。佐藤工業の事例で監督の3日間が戻ったのは、課題の中心が現場と紙のあいだの往復にあり、施策がその流れ全体に及んでいたからだ——ただし、これは公開事例からの読みであり、選定の経緯までは分からない。それでも「自社の書類の流れの上に、誰がいるか」を数えることは、今日からできる。

この記事に登場したサービス

記事で取り上げた事例で導入されていたサービスの一覧です(掲載データに基づく表記で、優劣や推奨を示すものではありません)。

ANDPAD請求管理andpad業務SaaS記事内の事例 →
RemotafastaccountingAI・データ分析記事内の事例 →
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