「あの人しか分からない」
——属人化に悩んだ会社たちの記録
今回は、成功の話をしない。導入事例の前半分——「導入前」の記述だけを読む。そこに残っていたのは、業種も規模も違う会社たちが驚くほど同じ言葉で語る、日本の職場の記録である。担当者が休むと止まる。辞めて初めて分かる。やり方が人数分ある。会社の記憶が個人のExcelにある。あなたの職場の症状に、ここで名前が付くかもしれない。
本記事は、ベンダー等が公開した導入事例のうち、導入前の課題に関する記述を集めて構成しています。公開に向けて選択・編集された記述であり、職場全体の実態や悩みの発生率を示す調査ではありません。また、いずれも改善に取り組み成功事例として公開された会社の記録であり、未導入の会社や公開に至らなかった取り組みは含まれず、公開後もすべての課題が解消されたとは限りません。

一対象とした事例
対象は、悩みタグ「#業務の属人化」が付く当サイトの掲載事例 ——現在417件・13業種。
編集メモ:悩みの型は、2026年9月9日時点の該当83件の課題要約を全件読んで作成した。2026年9月10日の改稿で、代表引用8本を原典と照合し、種別(当事者の発言/事例記事の記述/当サイトの課題要約)を各引用に表示している。該当事例はその後も増えており、上の件数と「繰り返される言葉」の集計は現在の掲載データに対して自動で行っている。
二繰り返される言葉
当サイトの課題要約417件のうち、その表現を含む事例の数を数えた。 言葉の反復の記録であり、症状の発生率や深刻度の順位ではない。
三業務の属人化は、こう姿を現す
型1その人が休むと、止まる
業務は回っている——その人がいる限りは。引用に共通するのは、不在の一日が図らずもリスクの棚卸しになったことだ。日常の中では、この型は姿を見せない。
型2辞めて初めて、見える
属人化は在職中には問題にならない。退職・異動・引き継ぎの瞬間に、業務が組織のものではなく個人のものだったことが発覚する。残された側の記述には、途方に暮れた時間が残っている。
型3同じ仕事のやり方が、人数分ある
誰も怠けていない。全員が自分のやり方で真面目に働いている。だから誰か一人を直せば済む話にならず、抜け漏れや行き違いという形で組織の側に症状が出る。
型4会社の記憶が、個人のExcelにある
帳簿と、個人PCの表計算と、本人の記憶。会社の中核データの置き場所として、事例は繰り返しこの3つを挙げる。作り込まれたExcelほど、その人にしか直せない。
四業種・規模を越えた記述の重なり
今回の対象には、従業員8名の建設会社から、従業員約18万人の物流企業までが並ぶ。8名の会社では資料の管理方法が現場監督ごとに分かれ、約18万人の会社では経験と勘に頼った貨物量の予測が限界を迎えていた(いずれも当サイトの課題要約より)。規模の離れた事例に、個人のやり方や経験への依存という似た記述が見られた——ただし、これは対象とした掲載事例の範囲での観察であり、規模と悩みの関係の有無まで示すものではない。
五各社が変えたこと
ここまでの引用は、いずれもその後に手を打った会社の「導入前」である。ここでは製品名ではなく、各社が業務の何を変えたのかを入口に、出口を並べる。詳しい経緯と成果は各事例記事にある。
情報の置き場所を、一カ所にした
個人の受信ボックス・個人PC・本人の記憶に散っていた情報を、全員が見られる一つの場所に集めた事例群。共和は貨物情報のハブを段階的に構築し、シオノケミカルは全貿易案件の進捗を一元化、タカラベは帳簿と記憶にあった現場情報を一つの管理に移した。
手順を、その人がいなくてもできる形にした
ぬくもりの家は、1人のベテランの手作業に依存していた給与計算をシステムに移し、誰でも対応できる仕組みに標準化した。富国生命不動産部は、外部委託と前任者に依存していたシステムを、引き継ぎ支援やドキュメント整備を経て自部門で運営できる体制に変えた。
個人の判断に頼らない流れを、業務に入れた
VIETNAM WASHINは、サプライヤー登録や購買先変更に承認フローを設け、担当者ごとの判断に頼らない運用に変えた。岐建は、担当者ごとに異なっていた施工情報の管理と指示を、試験運用から始めて一つのツール上に揃えていった。
参考:#業務の属人化 が付く当サイト掲載事例417件の、解き方カテゴリの内訳。 掲載データの構成であり、市場での分布や「この型にはこの製品」という対応を示すものではない。
その人が休んだ日に分かることを、休む前に数えておく。
この記録は、そのための道具である。
この記事に登場したサービス
記事で取り上げた事例で導入されていたサービスの一覧です(掲載データに基づく表記で、優劣や推奨を示すものではありません)。
チェックを付けたサービスの提供企業へ、編集部がまとめてお取り次ぎします。