
コンテンツに頼らない Reason to Call 戦略 〜商談理由を“つくる力”が営業を強くする〜
はじめに
マーケティングの世界では「コンテンツが重要」とよく言われます。
確かに、ホワイトペーパーや導入事例、ウェビナーといったコンテンツは、ユーザーに接触する“きっかけ”を生み出すうえで欠かせません。
しかし実際の現場では、
「新しいコンテンツを毎月出すのは大変」
「営業としては、もっと自然に話しかける理由がほしい」
そんな声が多く聞かれます。
本来、コンテンツは「商談を切り出すための理由」をつくる手段のひとつにすぎません。
逆に言えば、“理由”さえあれば、必ずしもコンテンツを作る必要はないのです。
この記事では、**「コンテンツに頼らず Reason to Call(商談理由)をつくる戦略」**を解説します。
Reason to Callとは何か
“Reason to Call”とは、直訳すれば「電話(または接触)する理由」。
営業やインサイドセールスにおいて、相手に不自然でなく連絡を取るためのきっかけを意味します。
BtoBでは、いきなり「買いませんか?」という連絡はほぼ無意味です。
だからこそ、「なぜ今、その話をするのか」という**文脈(理由)**が必要になります。
コンテンツマーケティングでは、その理由を「情報提供」という形でつくり出しています。
たとえば:
- 「新しい導入事例を公開しました」
- 「業界動向レポートをまとめました」
- 「来月の展示会で最新機を出展します」
これらはいずれも、“話しかける理由”を自然につくるためのコンテンツです。
コンテンツがなくても商談理由はつくれる
では、もしコンテンツを作るリソースがない場合はどうすればいいでしょうか?
答えはシンプルで、「コンテンツ以外の理由」を探せばいいのです。
営業現場では、実は多くの“商談理由の種”が日常的に発生しています。
それを意識的に拾い上げ、言語化できれば、立派なReason to Callになります。
以下では、5つの視点から「コンテンツに頼らない商談理由のつくり方」を紹介します。
1. 製品・サービス起点のReason
コンテンツを作らずとも、製品やサービスそのものの動きが理由になるケースは多いです。
| 具体例 | 相手に伝わる文脈 |
|---|---|
| 新製品・新機能のリリース | 「御社のようなライン構成なら、この自動化機能が活かせそうです」 |
| 価格改定・仕様変更 | 「今期で現行仕様が終了します。次期モデルのご案内を」 |
| 無料トライアル・デモ機提供 | 「今月限定でデモ機をお試しいただけます」 |
| サポート・保証期限 | 「メンテナンス延長のご案内です」 |
これらはすべて、実際の事実に基づく連絡理由です。
情報提供ではなく、“現実の変化”を理由にできるため、営業が動きやすく、相手にも自然に受け入れられます。
2. 関係性・接点起点のReason
人の動きや接点の更新もまた、立派な商談理由になります。
| 具体例 | 本質的な意味 |
|---|---|
| 展示会やセミナーでの接触 | 「先日の展示会でご挨拶した件で」=再会のきっかけ |
| 担当者の異動・引継ぎ | 「新担当としてご挨拶を」=立場変化に伴う自然な接点 |
| 社内紹介・他部署経由 | 「△△様からご紹介いただきまして」=信頼のバトン |
| 導入後フォロー | 「ご利用から半年経ちましたが、使い勝手はいかがですか?」=関係維持の確認 |
コンテンツを介さずとも、「会った」「つながった」「担当が変わった」などの人の動きは、
営業が連絡を取る十分な理由になります。
特に製造業BtoBでは、信頼関係の蓄積が商談化に直結するため、こうした接点を丁寧に活かすことが重要です。
3. データ・行動起点のReason
顧客の行動や市場の動きをトリガーにするアプローチです。
MA(マーケティングオートメーション)やCRMを使えば、
「誰が何に興味を示しているか」をある程度可視化できます。
| 具体例 | 相手に伝わる文脈 |
|---|---|
| サイトアクセス/資料DL | 「○○の記事をご覧いただいていたようですので、補足資料をお送りします」 |
| メール開封・クリック | 「先日のご案内にご興味をお持ちいただけたようで」 |
| 市場動向・法改正 | 「来年度の安全基準改定で御社ラインにも影響がありそうです」 |
| 同業他社の動き | 「他業界で同様の取り組みが始まっておりまして」 |
デジタル行動をフックにすることで、“相手の関心”に合わせた接触が可能になります。
情報提供ではなく「あなたの行動を見ています」というパーソナルな接点が価値になります。
4. 顧客側の変化起点のReason
BtoBでは、顧客の内部事情に目を向けることで共感型の商談理由を作れます。
| 具体例 | 切り出し方のイメージ |
|---|---|
| 設備更新・ライン増設 | 「新ラインの立ち上げ記事を拝見して、ご相談差し上げました」 |
| 担当者の昇進・体制変更 | 「新しいご体制での取り組みに合わせて、ご提案を」 |
| 生産拠点の拡張 | 「新工場の立ち上げに伴い、搬送設備の最適化をご提案したく」 |
| 採用・組織改編 | 「新部署設立のニュースを拝見しまして」 |
こうした“相手の変化”に対する反応は、調べてくれている感を与え、
営業の誠実さを印象づけます。
5. 関係維持・感情起点のReason
BtoBの世界では、「人と人との関係」を保つための接点づくりも欠かせません。
感情に寄り添うReasonは、短期の商談にはつながらなくても、長期的な関係維持に効きます。
| 具体例 | 本質的な意味 |
|---|---|
| 年賀・季節の挨拶 | 「新年度のご挨拶を兼ねて」=節目の自然接点 |
| 表彰・受賞のお祝い | 「受賞おめでとうございます」=祝福を理由に連絡 |
| 創立記念・周年 | 「創立○周年おめでとうございます」=関係の再確認 |
| 感謝フォロー | 「以前の案件では大変お世話になりました」=温度感の維持 |
こうしたやり取りは「人間的な営業」としての信頼を積み重ね、
“いざというときの相談先”として選ばれる下地になります。
Reason to Call 戦略の本質
ここまで見てきたように、商談理由はコンテンツ以外にもいくらでも存在します。
重要なのは、「営業が話しかける正当性を持つ」状態をどうつくるかです。
つまり、Reason to Call戦略とは:
- 相手に不快感を与えず、
- 自然に話を切り出し、
- 商談へつなげるための“接点設計”のこと。
コンテンツは“ひとつの手段”にすぎない
コンテンツマーケティングの本来の目的は「商談理由の創出」です。
情報を出すこと自体が目的ではありません。
だからこそ、Reason to Callの発想を持つと、
コンテンツも「作ること」から「どう使われるか」に意識が変わります。
- 事例記事 → 「御社と似た課題を持つ企業が成果を出しています」
- 技術資料 → 「今後の設計検討に役立つと思い共有しました」
- ウェビナー → 「同業の方も多く参加されていますのでぜひ」
つまり、コンテンツ単体ではなく、“会話を生み出す導線”として考えるのがポイントです。
営業とマーケティングの協業ポイント
Reason to Call戦略を実践するうえでは、営業とマーケティングの連携が鍵になります。
| 項目 | 営業が担うこと | マーケティングが担うこと |
|---|---|---|
| 理由の発見 | 顧客接点・市場の変化を拾う | 顧客データ・行動を分析 |
| 理由の設計 | 「どう話しかけるか」を考える | 「どんな話題が響くか」を設計 |
| 理由の共有 | CRMやSFAで蓄積 | MAツールでスコアリング |
双方が“商談理由”という共通言語で動くことで、
「コンテンツを作る」「営業が追う」という分業を超え、共同で顧客接点をデザインする体制がつくれます。
まとめ:理由をつくれる人が強い
商談は「何を売るか」よりも、「なぜ今話すのか」で決まります。
コンテンツがなくても、
- 製品の動き
- 顧客の変化
- データの示唆
- 人のつながり
- 感情や節目
これらを理由にできれば、立派なReason to Callになります。
💬 最後に
“コンテンツに頼らないReason to Call戦略”とは、
言い換えれば「顧客との対話を設計する戦略」です。
情報を作ることではなく、
**「話しかける理由を発見する力」**こそが、これからの営業の武器になる。
コンテンツがあっても、なくても。
理由をつくれる人が、強い営業です。





