
マーケティングは「論理」よりも「ストーリー」──製造業BtoBにも“感情”の文脈を
はじめに:なぜ今、論理よりストーリーなのか
マーケティングの世界では、「論理的に説明する」ことが正しいと思われがちです。
ROI、リード数、KPI、比較表、導入効果……。
BtoBになればなるほど、**数字や根拠を重視する“理性の世界”**になります。
しかし、最近多くの企業が気づきはじめています。
論理で人は動かない。動かすのはストーリーだ。
論理には、反対意見がつきものです。
どんなに筋の通った説明をしても、「うちの業界では違う」「その前提が違う」と返される。
ところがストーリーには、反対意見が生まれません。
「その人がそう感じた」ことに、正解も間違いもないからです。
BtoCではもちろん、BtoBの世界でも同じです。
経営判断をするのは“人”であり、最終的に意思決定を動かすのは“共感”なのです。
「論理」は理解を生む、「ストーリー」は納得を生む
製造業のマーケティング現場を見ていると、
「理解させること」に全力を注ぐケースが多くあります。
製品の特徴、機能、仕様、性能値……。
パンフレットもプレゼン資料も、ほとんどが**情報を整理して伝える“理解型コンテンツ”**です。
しかし、人が意思決定を下すときに必要なのは「理解」ではなく「納得」です。
納得を生むには、論理ではなく**ストーリー(物語)**が必要です。
たとえば、こういう違いです。
| 種類 | 論理的説明 | ストーリー的説明 |
|---|---|---|
| アプローチ | 機能・性能の比較 | なぜこの開発を始めたのか、どんな苦労があったのか |
| 訴求軸 | 数値・根拠 | 人の変化・挑戦の物語 |
| 感情の起点 | 理解 | 共感 |
| 結果 | 「いい製品だね」 | 「この会社と仕事したい」 |
論理は、頭に届く。
ストーリーは、心に届く。
その差が、ブランドになるかどうかを分けていきます。
ストーリーは「反論不能な説得」
「この製品で人生が変わった」「救われた」──。
そんな言葉に、反論する人はいません。
なぜなら、それは事実ではなく、体験だからです。
ストーリーの力は、“個人的な事実”を超えて“普遍的な共感”を呼ぶ点にあります。
人は、自分と同じ境遇でなくても、「変わった」「救われた」という変化のプロセスに惹かれます。
そして、それは製造業でもまったく同じです。
- 「現場が止まらなくなった」
- 「ミスが減った」
- 「新人教育が楽になった」
- 「あの苦情がなくなった」
数字で測れる成果ではなくても、“人のストレスが減った”という物語に人は惹かれます。
それが、製品の価値をもっとも直感的に伝える手段になるのです。
製造業BtoBにおける「ストーリーマーケティング」の実例
ここで、BtoBでもストーリーが効果的に働いた事例をいくつか見てみましょう。
① 「開発者の挑戦」ストーリー
ある制御装置メーカーでは、
「なぜこの機能を作ったのか」という開発背景を動画で紹介しました。
製品紹介動画ではなく、開発者インタビュー形式です。
「工場の止まらない仕組みを作るために、何年も改良を重ねた」
「不具合をなくすことより、“止まってもすぐ戻せる”設計を目指した」
この数分の動画は、営業資料よりもはるかに反応率が高く、
「共感した」「一緒に開発したい」といった問い合わせが増えました。
→ これは論理ではなく、“意思と努力”のストーリーが信頼を生んだ典型例です。
② 「顧客の成功体験」ストーリー
別の工作機メーカーでは、導入事例ページを**“改善ストーリー”形式**に変えました。
Before:「タクトタイムを10%短縮しました」
After:「納期遅延に苦しんでいたが、このシステムで現場が笑顔になった」
数字ではなく“人の変化”を中心に書いた結果、
平均滞在時間が3倍、リード獲得率が2倍に。
→ **「成果の裏にある感情」**を描くことで、導入前の不安を自然に解消しています。
③ 「ブランドストーリー」型展示体験
展示会では、製品を並べる代わりに、
**「開発の物語を3DCGで体験できる」**ブースを設計した企業もあります。
Vizlaboで制作したバーチャル展示会では、
「製品そのもの」ではなく「開発者の視点」を3D空間に再現。
来場者は、物語を“体験”しながら製品を理解していきます。
→ 結果、商談化率は従来展示の2.4倍に。
“説明より共感”の導線が成立した瞬間です。
「ストーリー」は信頼を生む最短ルート
BtoB営業では、「信頼構築」が最重要テーマです。
でも実際には、「どんなに良い製品でも、初対面では伝わらない」という現実があります。
ストーリーは、その信頼を一瞬で縮める力を持ちます。
なぜなら、人は“共感”を通じて信頼を判断するからです。
そして、共感を生む最も効率的な方法が、物語を語ることなのです。
「この会社の人は、こういう課題に真剣に向き合ってる」
「こういう想いで作ってるなら、話を聞いてみよう」
そう思ってもらえた瞬間に、信頼の最初のドアが開きます。
これはどんなデータよりも強力な“関係のはじまり”です。
では、どうやってストーリーを見つければいいのか?
ストーリーを作るのは難しそうに聞こえますが、
実際は「事実の並べ方を変えるだけ」で見え方が変わります。
以下の3つの観点で整理してみましょう。
① “きっかけ”を掘る
なぜその製品・サービスを始めたのか。
最初の問題意識や、現場の声を丁寧に拾う。
例:「展示会で毎回、製品を説明するだけで終わっていた」
→ そこからVizlaboの“体験型展示”は生まれた。
② “葛藤”を描く
開発や営業の中で、どんな壁にぶつかったのか。
理想と現実のギャップを語る。
例:「リアル展示の熱量をWebで再現するのは不可能だと思っていた」
→ だからこそ、3D×動画の実験を繰り返した。
③ “変化”を見せる
導入後や取り組み後に、何がどう変わったのか。
成果よりも“感情の変化”を描く。
例:「説明に苦労していた営業が、『動画を見てください』で済むようになった。」
これら3点を意識するだけで、
あなたの会社のサービス説明は、物語として伝わる営業資産に変わります。
「論理」では人は動かない。でも「ストーリー」なら動く
論理は“正しさ”を伝えます。
ストーリーは“意味”を伝えます。
そして、意味に共感した人は、自ら動きます。
だからこそ、マーケティングの役割は“納得の物語”を設計すること。
製造業BtoBは、ともすれば「技術」「スペック」「価格競争」に陥りがちです。
でも、そこに“物語”を重ねた瞬間、企業の印象が変わります。
まとめ:ストーリーは「企業の感情を見える化する技術」
マーケティングは理性の世界。
でも、購買は感情の世界。
BtoBであっても、最終的に判断するのは“人”です。
論理を積み上げても、感情を動かせなければ契約は生まれません。
ストーリーとは、企業の感情を見える化する方法です。
そしてVizlaboのように3DCGや映像で可視化すれば、
その感情を“体験”として伝えることもできるようになります。





