
問い合わせを生む「最強のReason to Call」とは ~製造業BtoBマーケティングで“行動”を引き出すための設計法~
BtoBマーケティングの目的は、単に情報を届けることではなく、相手に行動を起こしてもらうことです。
そして、営業が接触するための「きっかけ」こそが、Reason to Call(リーズン・トゥ・コール)=電話する理由/問い合わせする理由です。
多くの企業は「良い製品をつくれば問い合わせが来る」と考えがちですが、現実には**“問い合わせしたくなる理由”がない**と、どんなに優れた製品でも動きません。
本記事では、「一番強いReason to Call」とは何かを、製造業BtoBの現場を前提に具体的に掘り下げます。
1. Reason to Callとは何か
Reason to Callとは、“相手が今、話を聞く理由”をつくることです。
マーケティング用語でいえば「トリガー(行動喚起)」に近く、営業プロセスでは商談発生の起点になります。
多くの企業が抱える課題は、
「Webサイトや展示会でリードは取れているのに、そこから商談につながらない」
この“間”をつなぐのがReason to Callです。
メール1本、電話1本を「嫌がられない接触」に変えるための、心理的な橋渡しの役割を果たします。
2. 「強いReason」とは何か
強いReasonとは、ユーザーが“自分ごと”として感じる理由です。
つまり「それ、うちにも関係あるかも」と思わせること。
ここに共通するポイントは3つあります。
- 業界・時流と結びついている
→ 「今動かないと取り残される」と思わせる。 - 数字・制度など“動かす根拠”がある
→ 「感覚」ではなく「事実」に裏付けされている。 - “今”動く理由がある
→ 「今だけ」「今年中」「補助金が残っているうちに」など。
これらを組み合わせると、**ユーザーの中に“緊急性”と“納得感”**が同時に生まれます。
3. 最強のReason to Call =「自社状況 × 時流 × 損失回避」
問い合わせを最も強く引き出すのは、
「自社の状況」と「時流」を結びつけ、“放置すると損をする構造”を見せることです。
例1:制度トリガー
「2026年の省エネ法改正で、既存ラインの一部が基準未満になる可能性があります。」
→ 放置すれば法令違反・取引停止のリスク。“話を聞かない理由がない”。
例2:コスト・ROIトリガー
「エア駆動から電動に変えるだけで、年間▲▲万円の電気代削減が可能です。」
→ 数字で明確な利益が見える。ROIが直感的に理解できる。
例3:業界動向トリガー
「競合3社がすでに採用している省エネライン。その判断基準とは?」
→ “自社だけ遅れているかも”という不安が、行動を生む。
例4:供給・リスクトリガー
「主要メーカーが部品供給を2026年で終了予定。御社ラインの対応状況は?」
→ “動かないと困る”という緊迫感が最大化。
4. Reasonを設計する3ステップ
Step1:課題を「本人よりも先に」言語化する
営業の立場から、相手の課題を“半歩先読み”して提示すること。
「人手不足で自動化したい」ではなく、
「段取り替え作業が属人化して、自動化のROIが出ない構造ですね」
と言われた瞬間、相手は「わかってるな」と感じ、会話の主導権が変わります。
Step2:数字・制度と結びつける
課題を抽象的に話しても動きません。
そこに「数字」または「制度」を結びつけて、**“今、動く理由”**を補強します。
- 年間コスト削減額
- CO₂削減率
- 補助金の締切日
- 省エネ法や安全基準の改定時期
これらを“話題の入口”に置くことで、営業は自然に会話をスタートできます。
Step3:「放置による損失」を明示する
人は「得をするより、損をしたくない」生き物です。
したがって、「今動かないと損をする」構造をつくると、行動確率が一気に上がります。
たとえば:
「今年度の補助金で導入すると、実質コストが半分で済みます。来年は対象外になります。」
この一言が、メールのクリック率・問い合わせ率を何倍にも変えます。
5. 強いReasonを使ったコピー例
| タイプ | コピー例 | 目的 |
|---|---|---|
| コスト削減 | 「エアシリンダを電動に替えるだけで年間▲▲万円の節約に」 | 数字で興味喚起 |
| 制度対応 | 「2026年義務化の●●対応、御社の設備は間に合っていますか?」 | 緊急性 |
| 競合動向 | 「競合3社が導入済みの自動検査ライン、その理由は?」 | 焦り・比較 |
| 無料診断 | 「5分で分かる!御社の自動化レベル診断」 | 自分ごと化 |
| 成果事例 | 「同業A社が段取り時間を40%短縮した方法」 | 再現性の提示 |
| 供給終了 | 「主要メーカーが来年で供給停止。代替提案あります」 | リスク喚起 |
これらはいずれも**“問い合わせを正当化できる口実”**です。
営業担当者が自信をもってアプローチできる「話す理由」にもなります。
6. Reasonをコンテンツで育てる
Reason to Callは単発ではなく、コンテンツで仕込む設計が効果的です。
例:展示会後のフォローに活用
展示会で配布したカタログの後日メールで、
「展示会で話題になった“部品供給終了問題”の対応法をまとめました」
と送るだけで、単なるフォローが“動機付けの接触”に変わる。
例:ホワイトペーパーのテーマに
「CO₂削減に成功した製造ライン5事例」
という資料は、実は営業のための“強力なコール理由”になります。
例:ウェビナー
「2026年法改正で変わる製造ライン設計」
というテーマのウェビナーは、**問い合わせを生む“コンテンツ型Reason”**の典型です。
7. 「話を聞かせてください」ではなく、「今、話した方がいい理由」を伝える
多くの営業メールや電話が失敗する理由は、
「自社製品の話をしたい」
と始めてしまうことにあります。
ユーザーが知りたいのは製品ではなく、
「自分が今、動くべきかどうか」
その判断材料です。
だからこそ、Reason to Callの主語は常に“相手側”である必要があります。
8. まとめ:「最強のReason to Call」方程式
Reason to Call =(業界トレンド or 制度変化)+(自社の課題)+(今動く理由)
この3つを揃えるだけで、問い合わせ率は確実に変わります。
営業メール、展示会後のフォロー、ホワイトペーパー、どんなチャネルでも応用可能です。
おわりに
問い合わせを生むのは製品スペックではありません。
「行動する理由」を与えられるかどうか。
マーケティングがReasonを設計し、営業がそれを武器に接触する。
その連携こそが、BtoBマーケティングの本質です。
「今、話を聞いた方がいい」と思わせた瞬間、
その企業は“ただの製品紹介者”ではなく、“課題解決のパートナー”になります。
そして、それこそが――
一番強いReason to Call。





