
売上をめざすなら、「中間ゴール」を設けよう 王道の売り方は、“いきなり売らない”ところから始まる
多くの企業が「売上を上げたい」と言います。
しかし、そのための**中間ゴール(KPI)**を明確に設けている企業は、意外なほど少ないのです。
マーケティングでも営業でも、
“最終ゴール”を売上に設定すること自体は間違っていません。
けれど、**売上という結果を生む「プロセスのゴール」**がないと、
チームは「なにを、どこまでやればいいのか」が見えなくなってしまいます。
この記事では、
BtoBのリードビジネスにおける「中間ゴール(KPI)」の考え方を整理しながら、
王道の売り方=特定のプロセスを踏めば自然と売れる道筋を
どうやって見つけるのかを解説します。
「中間ゴール」がない営業は、地図のない航海
売上を直接コントロールすることはできません。
なぜなら、売上は顧客の意思決定の結果だからです。
あなたがいくら頑張っても、
相手が「買う」と決めなければ売上は発生しません。
しかし——
「商談数」「資料請求数」「セミナー参加数」「見積提出数」など、
**売上につながる行動(=プロセス)**はコントロールできます。
つまり、
売上を目標にするだけでなく、
その手前にある「中間ゴール(KPI)」を設けることが、
営業組織における実行可能な目標設計なのです。
中間ゴールとは何か
中間ゴールとは、
「このプロセスを通過すれば、高確率で売上につながる」
という購入前の決定的行動を指します。
たとえば:
| 業種 | 中間ゴールの例 | 売上との関係 |
|---|---|---|
| SaaS | 無料トライアル登録 | 登録者の30%が有料化 |
| 製造業 | 技術相談の実施 | 技術打合せをした企業の60%が見積依頼 |
| 教育サービス | 無料体験受講 | 体験後の入会率70% |
| コンサル | 課題ヒアリング面談 | 面談後の契約率50% |
この「中間ゴール」は、
業界やビジネスモデルによって異なります。
しかし、どの業種にも共通しているのは、
中間ゴールを明確に定義している企業ほど、安定した売上を生み出しているという点です。
売上を上げるより、「王道のプロセス」を確立せよ
営業やマーケティングの仕事は、
売上を“つくる”ことではなく、売上が“生まれる道筋”を設計することです。
たとえば、
「A → B → C」というプロセスを踏めば、
自然と受注が決まる——そんな“王道の売り方”を見つけること。
これが、中間ゴール設計の目的です。
例:製造業のBtoB営業プロセス
多くの製造業では、営業がこうしたプロセスを歩んでいます。
- 展示会で名刺交換(リード獲得)
- 後日フォローで資料送付
- 技術的な打合せ(仕様確認)
- 試作・評価
- 量産提案・契約
ここで注目すべきは、「③ 技術打合せ」。
このステップを踏んだ案件は、成約率が格段に高いことが多い。
つまり、製造業では「技術打合せを生み出すこと」こそが中間ゴールであり、
**営業とマーケの目標は「商談数」ではなく「技術打合せ率」**に置くべきなのです。
中間ゴールを持たないとどうなるか
中間ゴールがない営業組織では、次のような問題が起こります。
① すべてのリードを「今すぐ客」として扱う
展示会で名刺をもらった瞬間から「いつ買ってくれますか?」と迫る。
これは多くのBtoB企業に見られる典型的な失敗です。
まだ検討前の顧客にクロージングを仕掛けても、
購入タイミングが合っていないため、拒否反応を招きます。
結果的に、「営業が押しが強い」と敬遠されてしまう。
中間ゴールを設定していれば、
「今すぐ買う客」ではなく「今は話を聞く段階の客」として接することができ、
顧客との関係を壊さずにナーチャリング(育成)が可能になります。
② 営業活動が属人的になる
中間ゴールがないと、営業の成功要因がブラックボックス化します。
- なぜ受注できたのか
- どのプロセスが有効だったのか
- どの行動が無駄だったのか
これらが共有されないまま、
「できる営業」と「できない営業」の差だけが拡大していく。
一方、中間ゴールを設定している企業は、
「ここを通すと売れる」という再現性をデータで把握できます。
つまり、“勝ち筋”を組織で共有できるのです。
③ マーケと営業の連携が生まれない
マーケティング部門は「リードを増やす」ことを目的にしがちです。
営業は「受注を取る」ことに集中します。
両者の間に「中間ゴール」がないと、
どこでバトンを渡すべきかが不明確になり、
「リードの質が悪い」「営業がフォローしない」といった摩擦が生まれます。
中間ゴールを設定すれば、
「この段階のリードを営業に渡す」「ここまではマーケが育てる」
といった共通言語ができるのです。
中間ゴールの見つけ方
では、自社にとっての中間ゴールはどう見つければよいのでしょうか。
ポイントは3つです。
① 成約データを分析する
過去の受注案件を振り返り、
「どんなプロセスを経た案件が高確率で成約したか」を抽出します。
たとえば:
- 技術打合せを実施した案件:受注率65%
- ウェビナー参加後に商談した案件:受注率50%
- カタログ請求のみで商談した案件:受注率10%
このデータを比較すれば、
「技術打合せを創出する」ことが中間ゴールだとわかります。
② 顧客の購買心理を可視化する
顧客はどんなタイミングで「買ってもいい」と思うのか。
意思決定の“きっかけ”を探ることが重要です。
たとえば:
- 「他社との比較資料を見て判断した」
- 「試作段階で成果を確認した」
- 「社内で説得材料が揃った」
この“きっかけ”に直結する接点を中間ゴールに設定します。
③ 定性的なヒアリングを加える
数字だけでは見えない「感情のスイッチ」も大切です。
営業現場の声を拾い、どのプロセスで顧客の態度が変わったかを確認します。
- 「ウェビナーで信頼感を持った」
- 「技術者同士で話せたのが決め手」
- 「展示会で実物を見た瞬間に決意した」
こうした“体験的トリガー”を特定することで、
単なるKPIではなく、顧客の心理的転換点を中間ゴールとして設定できます。
KPIは「測定するため」ではなく「導くため」にある
KPIというと、「数値管理」のイメージが強いかもしれません。
しかし、本質は違います。
KPIとは、
**「顧客を理想の購買プロセスへ導くための道標」**です。
つまり、KPIを管理する目的は「数字を報告すること」ではなく、
顧客を中間ゴールへスムーズに導く仕組みをつくることにあります。
王道の売り方を確立することが、最強の営業戦略
“売れる営業”とは、話がうまい人ではありません。
“売れる道筋を知っている人”です。
中間ゴールを明確に持っている営業は、
感覚ではなくプロセスで勝負します。
- 展示会でリードを獲得したら、まず技術打合せを設定する
- 技術打合せをしたら、必ず試作依頼につなげる
- 試作後に成果を見せ、次の商談をアポする
このように、「次の行動を設計できる営業」こそが強い。
つまり、売上をめざすのではなく、売上が生まれる型をつくることが、
BtoB営業の本当の勝ち方です。
まとめ:中間ゴールは“売上を生むルートマップ”
- 売上は「結果」であって、直接コントロールできない
- だからこそ「中間ゴール」を設けて、プロセスをコントロールする
- 中間ゴールを通れば、顧客は自然と購入に向かう
- KPIは「測定のため」ではなく「導くため」に設定する
- 王道の売り方=“売上が生まれる道筋”を確立すること
中間ゴールを持たない営業は、地図のない航海をしているようなものです。
一方で、中間ゴールを明確に定義した営業は、
どの方向に舵を切ればいいかを常に理解しています。
そしてその積み重ねが、
再現性のある売上プロセス=王道の営業スタイルをつくっていくのです。





