
知っておきたいマーケティング用語:レベニュープロセスとは何か ― 売上を生み出す組織設計の考え方”
BtoB企業、とくに製造業や技術系の企業でよく耳にする課題に、
「マーケティングと営業がうまく連携できていない」というものがあります。
マーケティングは「リードを増やしたい」、
営業は「質の高いリードが欲しい」と言う。
でも、互いの成果指標が違うために、
本来つながるはずのプロセスが分断されてしまう。
このギャップを埋めるために登場したのが、
「レベニュープロセス(Revenue Process)」 という考え方です。
レベニュープロセスとは?
レベニュープロセス(Revenue Process) とは、
「売上(Revenue)を生み出すまでの一連のプロセスを、部門を横断して設計・管理する仕組み」
のことです。
マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスなど、
従来は別々に動いていた部門を「Revenue(収益)」という共通指標で結びつけ、
全体最適で成果を上げていくフレームワークです。
つまり、レベニュープロセスとは――
会社全体で「売上をつくる道筋」を見える化し、管理する考え方 なのです。
なぜ今「レベニュープロセス」が注目されるのか?
🔹 部門ごとの“縦割り”が限界を迎えている
これまで多くの企業では、
- マーケティング:リード数(件数)
- 営業:受注額
- CS(カスタマーサクセス):継続率
といったように、部門ごとに別々のKPIが設定されていました。
しかしこの構造では、最終的な「売上(Revenue)」へのつながりが不明確になりやすい。
マーケティングがたくさんリードを取っても、営業が商談化できなければ意味がない。
営業が新規を取っても、CSで解約が多ければ利益は減る。
つまり、部分最適ではなく、Revenueという共通のゴールで全体を設計する必要があるのです。
レベニュープロセスの基本構造
レベニュープロセスは、企業によって細部は異なりますが、
多くの場合、以下のような4フェーズで構成されます。
| フェーズ | 主担当部門 | 主な目的 | 主なKPI |
|---|---|---|---|
| 1. リード創出(Demand Generation) | マーケティング | 潜在顧客の獲得 | MQL数(マーケティング合格リード) |
| 2. 商談化(Lead Qualification) | インサイドセールス | リードの精査・温度感確認 | SQL率(商談化率) |
| 3. 受注(Sales Closing) | フィールドセールス | 契約・受注獲得 | 受注率・案件単価 |
| 4. 収益維持・拡大(Retention & Expansion) | カスタマーサクセス | 契約更新・アップセル | 継続率・LTV |
この4つのフェーズをバラバラに運営するのではなく、
ひとつの「収益の流れ(Revenue Stream)」として連携させる。
これがレベニュープロセスの根幹です。
レベニュープロセスの目的
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| 1. 売上責任を共有する | 部門ごとではなく、全体でRevenue責任を持つ |
| 2. ボトルネックを可視化する | どの段階(MQL→SQL→受注)で失速しているか分析 |
| 3. 顧客体験を統一する | 部門間で矛盾のないコミュニケーションを提供 |
| 4. PDCAを全社で回す | 同じ指標で改善を行うため、効果測定が容易になる |
「営業プロセス」との違い
「営業プロセス(Sales Process)」は、主に商談以降の流れを対象としています。
たとえばヒアリング → 提案 → クロージングといった段階です。
一方、レベニュープロセスは「商談前から受注後まで」をカバーします。
つまり、
- マーケティング(興味喚起)
- インサイドセールス(検討促進)
- フィールドセールス(提案・受注)
- カスタマーサクセス(継続・紹介)
これらを 一つの線でつなぎ、共通の指標で運営する のが特徴です。
レベニュープロセスの設計ステップ
Step 1:顧客の購買プロセスを可視化する
顧客がどのように情報を得て、どのタイミングで検討・決定するのかをマッピングします。
製造業なら「展示会→ウェブサイト→技術打ち合わせ→試作→導入」といった流れになるでしょう。
Step 2:社内の対応プロセスを重ねる
その購買行動に対して、自社がどの部門でどのように関与しているかを整理します。
(例)展示会:マーケ、問い合わせ:インサイド、試作:営業…など。
Step 3:ハンドオフ(引き継ぎ条件)を明確にする
「MQL→SQL→Opportunity→Closed Won」など、
フェーズの定義と評価条件を共通化します。
これが曖昧だと部門間の摩擦が生まれやすくなります。
Step 4:KPIを統一する
- マーケティング → MQL数
- インサイドセールス → SQL率
- 営業 → 受注率
- CS → 継続率
これらをRevenue指標(ARR、LTVなど)でつなぐことが肝です。
レベニュープロセスの導入効果
✅ 1. ボトルネックの早期発見
「リードは多いのに商談化しない」「受注率は高いが再購入が少ない」など、
問題の場所を明確に特定できます。
✅ 2. 売上予測の精度向上
フェーズごとのコンバージョン率を追うことで、
今月・来月・来期の売上を定量的に予測できます。
✅ 3. 部門間の摩擦が減る
マーケ・営業・CSが同じ指標で話せるようになるため、
「どっちが悪い」ではなく「どこを直すか」で会話できる。
✅ 4. 顧客体験が滑らかになる
部門を跨いでも顧客がストレスを感じにくく、
結果的に受注率・継続率が上がります。
製造業BtoBにおける実践例
| フェーズ | 主な施策 | 測定指標 | 使用ツール |
|---|---|---|---|
| 認知 | 技術記事・展示会動画 | 訪問数・CV率 | HubSpot Google Analytics |
| 興味 | ホワイトペーパー・ウェビナー | MQL数 | MAツール |
| 商談化 | 電話・メールヒアリング | SQL率 | SFA CRM |
| 提案・受注 | デモ・試作・見積もり | 受注率・受注額 | Salesforce |
| 継続 | 活用レポート・サポート | 更新率・LTV | CSツール |
このように、顧客の行動データをベースに部門を連携させると、
営業効率・マーケROI・顧客満足度のすべてを一気に高めることができます。
レベニュープロセスを支える考え方:RevOps(Revenue Operations)
レベニュープロセスを実行レベルで支えるのが、**RevOps(レベニューオペレーションズ)**です。
これは、マーケティング・営業・CSを横断的にサポートし、
データ統合・ツール管理・分析・最適化を担当するチームのこと。
近年のSaaS企業や製造業DX企業では、
「マーケと営業をつなぐ中枢」としてRevOps部門を置く例が増えています。
レベニュープロセス導入時の注意点
-
部門のKPIをそのまま持ち込まないこと
→ あくまで“売上につながる指標”を優先する。 -
データ基盤を統一すること
→ CRMやMAツールを統合して「単一の顧客データ」を持つ。 -
現場の納得感を得ること
→ 数字だけでなく、各部門の目的を理解し合うことが重要。 -
いきなり全社導入しないこと
→ まずは「マーケ+インサイド+営業」など部分的に試行し、効果を測定。
まとめ:レベニュープロセスは“組織の思考フレーム”
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 売上を生み出すプロセスを部門横断で設計・管理する仕組み |
| 目的 | マーケ・営業・CSの連携強化と収益最大化 |
| 効果 | KPI統一・ボトルネック可視化・売上予測精度向上 |
| キーワード | MQL / SQL / LTV / RevOps / Pipeline |
一言でまとめると
レベニュープロセスとは、「リード創出から顧客維持までを、Revenueという1本の線でつなぐ組織の仕組み」である。
おわりに
「売上を上げる」というゴールは、どの企業でも同じです。
しかし、その過程を部門ごとに分断してしまえば、最適化のチャンスを逃します。
レベニュープロセスの考え方を導入することで、
マーケティングも営業もCSも、同じ“収益ストーリー”を共有できるようになります。
結果として、顧客との関係性が途切れず、
「リードをつくって終わり」「受注して終わり」ではない、持続的な成長サイクルが生まれます。
これからのBtoB企業にとって、
「レベニュープロセス」は知っておくべきマーケティング用語の一つです。





