
コンテンツサイトとホームページを分ける意味 ── 情報設計から考えるBtoBサイトの最適構成
BtoB企業がWebを活用しようとするとき、
必ずといっていいほど議論になるのが「ホームページとコンテンツサイトを分けるべきか?」という問題です。
自社サービスの紹介をする**コーポレートサイト(ホームページ)と、
集客や教育を目的としたコンテンツサイト(オウンドメディア)**をどう構成するか。
この問いに明確な答えはなく、企業の規模や目的によって最適解は変わります。
ただし、多くの企業で混乱が起きるのは、**情報構造の原則を理解しないまま“なんとなく分ける”**からです。
この記事では、コンテンツサイトとホームページを分けることの意味を、
「混乱」「階層」「印象」「整合性」という4つの観点から整理していきます。
1. そもそも「ホームページ」と「コンテンツサイト」は何が違うのか?
まず、定義を整理しておきましょう。
| サイト種別 | 主な目的 | 代表的なページ内容 |
|---|---|---|
| ホームページ(コーポレートサイト) | 会社の信頼性を示す・製品を紹介する | 会社概要、製品情報、採用情報、問い合わせ |
| コンテンツサイト(オウンドメディア) | 見込み顧客の育成・SEO集客 | 業界課題記事、ノウハウ記事、事例紹介、コラム |
両者の目的は**「今すぐ客」か「将来客」か**で大きく異なります。
- ホームページ → すでに関心を持っている人に安心感と製品情報を提供する
- コンテンツサイト → まだ課題が明確でない人に気づきと学びを提供する
つまり、「誰に・どんな段階で」見せたいかの違いが根本にあるのです。
2. 混乱する ── 分け方の意図が曖昧なまま構築されると迷子になる
最も多い失敗が「コンテンツサイトを別ドメインで立ち上げた結果、どこで何を見ればいいのかわからなくなる」というケースです。
典型的な混乱のパターン
- ホームページにも「ブログ」メニューがあるが、内容が浅い
- 別ドメインに「オウンドメディア」があるが、製品紹介への導線がない
- どちらも似たようなトーンの記事が載っていて差が不明瞭
結果として、ユーザーは「どっちを見ればいいの?」となり、
ブランド全体の体験が断片化してしまいます。
原因
多くの場合、組織内で
「SEOは別サイトでやった方がいい」
「メディアっぽく見せたいからドメインを分けよう」
といった“部分最適の判断”が先行しており、
**情報全体の流れ(UX設計)**が置き去りになっていることが原因です。
3. 階層が深くなる ── 「別サイト化」に潜む情報設計の罠
ホームページとコンテンツサイトを分けると、
情報階層が横にも縦にも広がりすぎるという問題が起こります。
例:製造業BtoB企業の構成
/ (トップ) ├── product/ │ ├── feature/ │ ├── spec/ │ └── case-study/ └── media/ ├── column/ ├── interview/ └── whitepaper/
このように階層を分けてしまうと、
ユーザーが「製品情報にたどり着くまでのクリック数」が増えるだけでなく、
どの階層にどんなコンテンツがあるのかを把握しづらくなります。
結果的に、
- コンテンツサイト側から製品ページへの導線が断たれる
- Googleのクロール効率が悪くなる
- 社内でのコンテンツ管理が煩雑化する
といった“情報迷子”状態が起こるのです。
4. 雑多な印象を受ける ── デザイン・トーンの一貫性問題
別サイトにすると、デザインやトーンが統一されにくくなります。
- ホームページ → 企業ブランディング重視でフォーマル
- コンテンツサイト → カジュアルで読み物風
この差が悪目立ちすると、「別会社が運営しているのでは?」という印象を与えてしまいます。
BtoBでは特に信頼感が重要なため、
トーン&マナーがズレることは大きなマイナスです。
対応策
- 共通ヘッダー/フッターを採用する
- ブランドカラーやフォントを統一する
- ナビゲーション設計を一元管理する
「サイトは分けても、世界観はつなげる」ことが重要です。
5. 情報の整合性がとれなくなる ── 更新・連携の課題
別ドメインでサイトを分けると、情報更新の同期が難しくなります。
よくあるケース
- ホームページの「導入事例」と、メディアの「事例紹介記事」で内容が微妙に異なる
- 採用情報やニュースがそれぞれで重複している
- URL構成や公開日基準がバラバラ
こうなると、ユーザーから見たときに「この会社、情報古くない?」と感じられ、
信頼を損なう要因になります。
理想は“情報ソースの一元化”
- すべての記事・ページを同じCMSで管理する
- ドメインは1つにして**サブディレクトリ分け(/mediaなど)**で対応
- 更新の責任者を1人(または1チーム)に集約する
この体制をとるだけで、整合性の問題はほぼ解消できます。
6. では、いつ「分けるべき」なのか?
もちろん、「分けてはいけない」という話ではありません。
以下のようなケースでは、別サイト運営が有効です。
分けたほうがよい条件
- まったく異なるペルソナ・目的を持つサイトを運営する場合
(例:学生向け採用サイト、エンジニア向け技術ブログ) - 企業ブランドとは切り離してメディアブランドを育てたい場合
(例:「製造業×DXマガジン」「〇〇Lab」など) - SEO・外部リンク戦略上、独立したドメインの方が優位な場合
つまり、ブランドや読者層が明確に違うなら、分ける意味が生まれます。
ただし、「とりあえずSEOのために」「雰囲気的に」分けるのは危険。
その判断には運用負荷・管理体制・更新リズムを必ずセットで考える必要があります。
7. 一貫性のあるWeb全体設計の考え方
結論として、ホームページとコンテンツサイトの関係は**「別々の島」ではなく「同じ地図上の街区」**として設計するのが理想です。
設計の基本ステップ
- 目的を定義する
- 信頼獲得/リード獲得/採用/ブランディングのどれを優先するか
- ペルソナを明確にする
- どの層にどんなストーリーで情報を届けたいか
- コンテンツマップを描く
- トップから下層までの導線・カテゴリ構成を俯瞰する
- デザインとCMSを統一する
- ブランド体験と運用効率を両立させる
このプロセスを踏むことで、
“コンテンツサイトを分けるべきか”という問いに自ずと答えが出てきます。
8. まとめ ── 分けること自体が目的になっていないか?
多くの企業が「ホームページとメディアを分ける」という判断を下すとき、
本来の目的を見失っています。
「SEOのため」「デザインを変えたいから」「運用担当が違うから」
こうした理由で分けても、結果的に情報が分散し、
ユーザーが迷子になるだけです。
分ける目的は「届ける相手が違うから」であるべき。
そして、もし届けたい相手が同じなら、無理に分ける必要はありません。





