
マーケティングには2つの型がある──製品をつくるマーケと、売れるしくみをつくるマーケ
「マーケティング」と一口に言っても、その中身は実に幅広いものです。
広告、SNS、展示会、リード獲得、CRM…といった施策面ばかりが注目されがちですが、実はもっと根本的なところで、マーケティングには2つの型があります。
それが、
- 顧客ニーズを把握して製品を開発するマーケティング
- すでにある製品を売れるしくみにのせるマーケティング
の2つです。
多くの企業では、この2つの活動がごちゃまぜに語られます。
しかし両者は目的も進め方もまったく違うため、混同していると「思ったほど売れない」「施策が空回りする」といった問題が起きがちです。
型①:顧客ニーズを把握して製品をつくるマーケティング
まず1つ目は、「まだ製品が存在しない」あるいは「市場ニーズに確信が持てない」段階で行うマーケティングです。
いわば プロダクト起点型マーケティング と呼べるもので、主な目的は “売れる可能性のある製品コンセプトを見つけること” にあります。
この型の特徴は以下の通りです。
- 市場調査やユーザーインタビューが中心
└ 顧客の課題や未充足ニーズを深掘りする - 顧客像(ペルソナ)や購買動機を仮説構築する
- MVP(最小実行可能製品)を作って反応を見る
- 初期顧客(アーリーアダプター)からのフィードバックを重視
つまり、「何を作れば売れるのか」を探る活動です。
スタートアップや新規事業開発、既存事業でも新市場を狙うときなどは、この型が欠かせません。
この段階で必要なのは、広告予算よりも 顧客と対話する力 です。
数値指標よりも、「本当に欲しいか」「お金を払うか」という生の声の収集が重要になります。
型②:すでにある製品を売れるしくみにのせるマーケティング
一方で2つ目は、すでに製品が存在しており、それをいかに効率的に売るかに焦点を当てる型です。
こちらは セールス起点型マーケティング とも呼べます。
- 見込み顧客を集め、育て、営業につなぐ
- 広告・展示会・SEO・ウェビナーなどの施策を組み合わせて導線を設計
- CVRやCPAなどの数値をもとに改善を繰り返す
- 営業部門と連携し、商談化率や受注率を高める
つまり、「どうやって売るか」を最適化する活動です。
プロダクトがある程度市場に受け入れられている前提で、投資対効果を最大化することが主眼となります。
この段階では、顧客の声を聞くことも重要ですが、それ以上に データをもとに意思決定し、再現性を持たせることが求められます。
なぜこの2つを区別する必要があるのか
この2つを混同してしまうと、次のような問題が起こりがちです。
- まだニーズが検証できていないのに、広告を大量投下してしまう
→「そもそも誰も欲しくない」製品に費用をかけることに - 売り方を考えるべき段階なのに、商品企画をやり直そうとしてしまう
→「製品は良いのに売れない」状況から抜け出せない
とくに製造業やBtoBでは、開発主導で製品が先に出来上がることが多く、
実際には型②(売れるしくみづくり)をやるべき段階なのに、
「もっと顧客調査をしないと」と型①の思考に逆戻りしてしまうケースがよくあります。
逆に、型①の段階では、広告や営業施策で無理やり売ろうとしないことが重要です。
「製品ができたから売る」ではなく、「売れる製品を見つけてから売る」という順番を守らなければ、努力が空回りします。
両者はシーソーのように役割が入れ替わる
この2つのマーケティングは、企業の成長ステージや製品ライフサイクルによって、どちらを重視すべきかが入れ替わります。
- 初期(立ち上げ) … 型①を中心に、「何を作るか」に集中
- 成長期(拡販) … 型②に軸足を移し、「どう売るか」に集中
- 成熟期(収益化) … 型②で効率化しながら、次の型①を並行検討
つまり、どちらか一方ではなく、フェーズによって使い分ける視点が必要です。
数字で管理するのは型②、仮説検証するのは型①
もうひとつ大切なのは、評価指標の違いです。
- 型①(製品をつくるマーケ)
→ 顧客インタビュー数、仮説数、MVPテスト結果、顧客の支払意思など - 型②(売れるしくみをつくるマーケ)
→ CPA、CVR、商談獲得単価、受注率、LTVなど
型①は「仮説と学習」を管理し、型②は「数値と再現性」を管理します。
この違いを理解していないと、「数字が出ていない=失敗」と誤解して、本来学習段階にある型①を途中でやめてしまうことにもなりかねません。
まとめ:まず自分たちはどちらの型をやるべきかを決める
マーケティングには、
- 顧客ニーズを把握して製品をつくる「型①」
- すでにある製品を売れるしくみにのせる「型②」
という2つの型があります。
どちらが良い悪いではなく、今どちらをやるべきフェーズなのかを明確にすることが最も大切です。
- まだ売れる確信がない → 型①(顧客理解と仮説検証)
- 売れる確信がある → 型②(導線設計と数値管理)
この見極めを誤らなければ、施策はバラバラに見えても、最短距離で「売れる」構造を築くことができます。
製品をつくるマーケティングと、売るマーケティング。
今あなたの会社に必要なのは、どちらでしょうか?





