
営業網がある製造業にインサイドセールスは本当に必要か?理想的なリード連携フローとは
近年、BtoBマーケティング界隈では「インサイドセールス」という言葉を頻繁に耳にします。
Web経由でリード(見込み顧客)を獲得し、すぐに営業訪問するのではなく、まずは電話やメールで温度感を確認してから営業に引き渡す──そんな内勤型の営業体制を指します。
しかし、すでに営業網を持つ製造業にとって、それは本当に必要なのでしょうか?
実は、製造業BtoBのように「製品単価が高い」「顧客数が限られている」「既存顧客との関係性が深い」といった業態では、インサイドセールスを新設することがかえって遠回りになる場合も少なくありません。
理想的なリード連携フロー
営業網を持つ製造業では、営業が素早く動ける仕組みを作ることが何より重要です。
そのために有効なのが、次のようなシンプルなフローです。
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- Web施策でリード獲得
製品ページ・ホワイトペーパー・展示会・広告などを通じて、顧客の興味を引き、行動データを蓄積する。
- Web施策でリード獲得
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- マーケ部がホットリードを選別
資料請求や動画視聴完了など、今すぐ商談に至る可能性が高いリードを抽出する。
- マーケ部がホットリードを選別
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- 営業担当にリアルタイムで通知
Slackやメール、CRMなどを活用し、担当営業に即時通知する。
- 営業担当にリアルタイムで通知
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- 営業が直接アプローチ(電話/訪問/メール)
関心が高いうちに営業が接触し、商談化を図る。
- 営業が直接アプローチ(電話/訪問/メール)
この流れなら、「まずインサイドセールスが一次対応してから営業に渡す」というステップを省き、商談機会を逃さずスピード感ある対応が可能になります。
インサイドセールスが必要になる条件
もちろん、インサイドセールスが有効になる状況もあります。
たとえば、以下のようなケースです。
| 条件 | 内容 |
|------|------|
| リード数が月100件以上 | 営業だけでは捌ききれない量 |
| 営業が全員に対応できない | 優先順位づけが必要 |
| 単価が低い | 営業1人当たりの生産性を高めたい |
| 商談前に振り分けたい | 電話やメールで事前ヒアリングしたい |
| 全国規模・不特定多数 | 営業網がなく、来訪対応が非効率 |
| 内勤対応の方が効率的 | 現地訪問がコストに見合わない |
これらは、「営業網が乏しい」あるいは「営業コストが合わない」業態においてこそ有効です。
しかし、営業網が全国に張り巡らされていて、1件あたりの単価が高く、顧客数が限られている製造業では、むしろ営業が直接動いたほうが早く確実に成果につながることが多いのです。
リードナーチャリングは必要。ただし役割を誤解しない
ここで誤解してはいけないのが、「インサイドセールスが不要=ナーチャリングも不要」というわけではない、という点です。
BtoBでは購買プロセスが長く、1度の接点ですぐに案件化するとは限りません。
そのため、関心を示した潜在顧客に対して継続的に情報提供を行い、購買意欲が高まるまで育てる「リードナーチャリング」自体は欠かせません。
ナーチャリングと即対応は別軸
ただし重要なのは、**「ナーチャリングを営業への引き渡し条件にしてしまわない」**ことです。
ナーチャリングは「将来有望な層」を育てるためのものであって、今ホットなリードを寝かせる理由にはなりません。
つまり、ナーチャリングと即時対応は別軸で並行するべきです。
- 今すぐ商談化しそうなリード → すぐ営業へ通知・対応
- まだ検討初期のリード → メールやセミナー、ホワイトペーパーなどで情報提供を継続
このように分けることで、営業は「今すぐ案件」だけに集中でき、マーケは「未来の案件」を着実に育てるという理想的な分業ができます。
「営業が動ける情報設計」を最優先に
営業が迅速に動けるようにするには、単に「リードを渡す」だけでは不十分です。
営業が“動きやすい形”で情報を整えて渡すことが大切です。
営業に渡すべき情報例
| 必要な情報 | 具体例 |
|-----------|---|
| 誰が | 山田太郎(技術部マネージャー)@abc-corp.co.jp |
| 何に興味を示したか | ◯◯製品の紹介ページを3分以上閲覧/資料DL |
| どこから来たか | 展示会来場後/広告クリック経由 |
| どの導線をたどったか | メール → 製品ページ → DL → お問い合わせフォーム |
このような情報が揃っていれば、営業は「誰に・どの製品の話を・どの温度感で」話せばよいかを瞬時に判断できます。
そして、Slack・メール・CRMなどを通じてリアルタイムで通知する仕組みを作れば、営業は通知を受けた瞬間に電話や訪問の段取りを始められます。
まとめ:営業網があるなら「即対応×ナーチャリング並行」が最適
製造業BtoBで営業体制が整っている企業にとって、インサイドセールスを新設するのは必ずしも得策ではありません。
むしろ、
- 今すぐ商談につながりそうなリードは即営業に渡す
- それ以外のリードはナーチャリングで育てる
- 営業が動きやすい形で情報を整理・通知する
という仕組みを作ることが、営業力を最大限に活かす最短ルートです。
ナーチャリングは不要なのではなく、「今すぐ案件」と「未来の案件」を分けるという考え方で活用することが大切です。
営業網が整っているからこそ、遠回りせず、最短距離で商談に繋げる仕組みを目指しましょう。