
BtoBで『営業が強い』とはどういうことか?
BtoBの世界では「営業が強い会社」「営業力があるチーム」という表現をよく耳にします。
しかし、それは単に「営業人数が多い」ことや「押しの強さで売れる」という意味ではありません。
本当の「営業が強い」とは 顧客の課題を解決し、再現性をもって成果を生み出せる状態 を指します。
本記事では、「営業が強い」状態を 要素・KPI・プロセス・育成ロードマップ に分けて構造化します。
「営業が強い」の定義(サマリー)
- 課題発見力:顧客の真因を見抜き、言語化できる
- 案件創出力:継続的に新規・既存から商談を生み出す仕組みがある
- 意思決定推進力:複数ステークホルダーを巻き込み、稟議を通す
- 再現性:個人技に依存せず、誰でも回せるプロセスがある
- 関係構築力:導入〜活用まで並走し、LTVを最大化する
1. 顧客の課題を正しく理解できる
BtoB取引で顧客は「商品」ではなく「課題解決」を買います。
強い営業は、業界構造/運用フロー/評価指標を理解し、症状(表層)と原因(深層)を分離して提案します。
現場のポイント
- 初回は「解決方針の仮説」から入り、検証質問で合意形成
- **意思決定基準(評価軸)**を顧客側と早期に揃える
- 課題・効果・リスク・代替を1ページに整理(1-Pager)
課題発見力がある営業は強い。
2. 案件を生み出す力がある
強い営業は、マーケ・CS・既存顧客と連動し、継続的なパイプラインを自律的に作ります。
具体策
- 展示会/セミナー/ウェビナーのフォローSOPを整備(24h/72h/7dで接触)
- 既存顧客の**拡張仮説(横展開/上位プラン/周辺部署)**を四半期で設計
- 紹介プログラムの仕掛け(紹介者インセンティブ・共同登壇)
新規開拓とリード獲得の両輪が回せる営業は強い。
3. 意思決定を動かせる
BtoBでは技術・購買・現場・経営など多面承認が必須。
強い営業は、評価軸を可視化し、ROI・リスク対応・実行計画を先回り提示します。
チェックポイント
- 主要ステークホルダーのKPI/懸念/成功基準を把握
- 稟議資料テンプレを提供(費用対効果・比較・体制・リスク)
- PoC→本番移行の判断基準を合意(成功指標・計測方法・期日)
社内稟議を突破できる営業は強い。
4. 再現性のある営業プロセスがある
「エースだけが売れる」は強さではありません。
強い組織は、SFA/CRM・資料・話法・レビューを仕組みに落とします。
再現化の要素
- ステージ定義(例:MQL→SAL→SQL→PoC→Close)と進捗条件
- ヒアリング項目(課題・現状KPI・評価軸・意思決定構造)
- 勝ちパターン資料集(業界別1-Pager、ROIシート、稟議テンプレ)
- Deal Review(週次):リスク洗い出しと次アクション合意
組織として強い営業は、再現性を持っている。
5. 顧客との長期的な関係を築ける
導入後の定着まで伴走し、LTV最大化に寄与します。
信頼が蓄積されると、継続・アップセル・紹介が循環します。
施策例
- 活用プラン90日+定例(価値確認、阻害要因の除去)
- 成功事例の社内共有会を顧客側で開催(営業が運営支援)
- **QBR(四半期レビュー)**で成果・次期計画・新規活用提案
信頼関係を構築できる営業は強い。
よくある誤解とNG
- 人数増=強い:属人化が進み逆に生産性低下
- 値引き=強い:短期受注はできてもLTV悪化・再現性なし
- 機能説明=提案:顧客の評価軸に沿っていないと響かない
KPI設計(ファネルと指標)
| レイヤー | 代表KPI | 補助KPI |
|---|---|---|
| パイプライン | パイプライン総額、カバレッジ(目標売上の何倍) | 新規/既存比率、業界別構成 |
| 進捗 | ステージ移行率(MQL→SAL→SQL→PoC→Close) | 平均滞留日数、ノーショー率 |
| 受注 | 受注率、平均受注単価、粗利率 | 競合別勝率、意思決定日数 |
| 継続 | 解約率、NDR/NRR、アップセル率 | 利用率、アクティブ席数 |
| 生産性 | 1人あたり受注額、案件同時保有数 | 1stレス時間、接触頻度 |
パイプライン逆算(例)
- 目標売上:12,000,000円/四半期
- 受注率:25% → 受注必要額:12,000,000
- 必要SQL額:48,000,000(12,000,000 ÷ 0.25)
- MQL→SQL転換:20% → 必要MQL額:240,000,000
- 平均商談単価:3,000,000円 → 必要SQL件数:16件
→ 週あたり新規SQL ~1〜2件 を安定供給する設計に。
強い営業を作る 90日ロードマップ
Week 1–2|設計
- ステージ定義、評価軸、ヒアリング票、稟議テンプレを確定
- 既存案件の見直し基準を統一(Next Action・期限)
Week 3–6|仕組み化
- SFAの必須入力とダッシュボード整備
- 勝ち資料(業界別1-Pager、ROIシート)を共通化
- Deal Review開始(週1・30分・全案件)
Week 7–10|案件創出
- 展示会/ウェビナーのフォローSOP実装
- 既存アップセル・紹介のキャンペーン化
Week 11–12|定着と振り返り
- KPIレビュー、阻害要因の除去、次四半期の重点仮説策定
稟議を通す資料の骨子(雛形)
- 目的と背景(現状の課題・影響)
- 評価軸(費用・効果・リスク・体制)
- 解決アプローチ(代替比較表を含む)
- 投資対効果(TCO/回収期間/定量効果)
- 実行計画(体制・スケジュール・責任)
- リスクと対策(中止基準/エスカレーション)
- 最終判断の依頼事項(決裁額/期間/条件)
マーケ・CSとの連携(最小構成)
- MKT → Sales:リード属性・コンテンツ閲覧ログ・評価軸の推定
- Sales → CS:導入目的・成功指標・PoCでの学び
- CS → Sales/MKT:活用データ・成功事例・阻害要因
→ 共有は1-Pagerと定例QBRで回すのが最短。
まとめ
「営業が強い」とは、
課題発見力/案件創出力/意思決定推進力/再現性/関係構築力 が KPIと仕組みで回っている状態。
単発の「売れた」ではなく、再現可能に勝ち続ける設計こそがBtoBの強さです。