
虚栄心がコンテンツマーケティングを止める:上司の細かい指摘にどう向き合うか
コンテンツマーケティングをはばむ「虚栄心」
コンテンツマーケティングを実践していると、多くの企業で共通して起きるのが 「虚栄心の罠」 です。
具体的にはこうです。
- 上司や経営層から「もっと綺麗に」「もっと正確に」と細かい指摘が入る
- 社内での承認フローが長引き、発信のスピードが落ちる
- 結果として「手間ばかり増えて、アウトプットが減る」
こうして 工数は増え、発信頻度は落ち、マーケティングの効果が出ない という悪循環に陥ります。
実際に、BtoB企業の現場では「もっと質の高いコンテンツを出さないと恥ずかしい」という心理が強く働き、シンプルな情報発信すら滞るケースが多々あります。これがまさに「虚栄心」によるブレーキです。
なぜ「細かい指摘」が入るのか?
仕事をする上で「細かい」ということは必ずしも、マイナスではなりません。
「神は細部に宿る」という言葉もありますから、むしろ歓迎されるべきことです。
しかし、それによって、手数が減ってしまうとなると、話は別です。
マーケティングはトライアンドエラーの連続です。
理屈でこれっといった正解がでないのがマーケティングです。
想定通りの効果がでないなんて、ざらになることです。
そうとわかっていても、おそらく偉い人からの細かい指摘は止まらないでしょう。
1. 会社の顔を守りたいという心理
上司にとっては、自分が関わるコンテンツが外部に出ていく以上、「粗があってはいけない」と考えます。これは自然な心理ですが、完璧主義に傾くと「出さないほうが安全」という結論に至りがちです。
2. 自分の立場を守る防衛本能
社内政治の一環として「自分がチェックした」という痕跡を残すために、あえて細部を直すケースもあります。ここでは、内容の本質よりも “関与感” が優先されてしまうのです。
3. コンテンツマーケティングの本質を理解していない
多くの人は「コンテンツ=完成度の高いパンフレット」と誤解しています。しかし、デジタルにおける発信は 「まず出すこと」こそが最大の価値 です。この認識のズレが指摘の連鎖を生みます。
発信頻度が落ちることの致命的リスク
BtoBマーケティングでは「継続的な接触」が信頼構築の鍵になります。
週に1本のブログ記事を出していたのに、上司の指摘で月1本に減ってしまったらどうなるか?
- SEO効果はほぼ消える
- SNSでの露出機会が激減する
- 社外の期待値も下がり、ブランドの存在感が薄れる
つまり、細かい指摘を重視した結果、全体の成果を失う という本末転倒が起こるのです。
どうやって防ぐのか?
1. 承認プロセスをルール化する
「誰が、どこまで、どの観点でチェックするのか」を明文化することで、無限の指摘ループを防げます。
たとえば:
- 事実誤認の有無のみチェック
- 誤字脱字の確認のみ
- トーンやスタイルはマーケチームに一任
これを社内で合意形成しておくことが重要です。
2. 完璧を目指さず「改善前提」で出す
Webコンテンツの最大の利点は、後から修正できる こと。
完璧主義を排し、「まず出す、あとで直す」という文化を根付かせる必要があります。
- 公開した後にアクセスデータを見てリライト
- 反応の薄い記事を削除・統合
- FAQ化やスライド化で二次利用
この循環を示せば、「未完成のまま出すこと」が恥ずかしいのではなく「出さないこと」の方がリスクだと伝えられます。
3. KPIを「発信頻度」に置く
質を議論すると終わりがありません。そこで、まずは「月に◯本発信」というKPIを設定します。
量を担保することで、自然と改善サイクルが回り、質も上がっていきます。
この「量の目標」を組織に浸透させると、細かい指摘よりも 「本数を守ることが優先」 という共通認識が生まれます。
4. 上司を「巻き込む」立場に変える
上司を指摘役にするのではなく、共著者や監修者として巻き込む のも有効です。
「自分が手を加えなければ」という心理を逆手に取り、上司の知識や経験を記事に反映させる形に変えると、不要な細かい指摘が減ります。
5. 成果データで説得する
最後は数字です。
「記事本数が減った月は、リード獲得も減った」というデータを示せば、上司も指摘よりも成果を優先せざるを得ません。
- 記事本数と問い合わせ件数の相関
- 発信停止期間とサイト流入数の減少
- リード獲得単価の比較
これらを見せることで、「細かい指摘で止める=売上を落とす行為」であると明確に伝えられます。
まとめ:虚栄心より「接触頻度」を優先せよ
コンテンツマーケティングは、虚栄心との戦い でもあります。
「完璧でないと恥ずかしい」という心理を捨て、“まず出すことが最大の価値” というマインドを組織に広めることが必要です。
- 承認プロセスをシンプルに
- 完璧よりスピードを重視
- KPIは質ではなく量
- データで説得する
この4つを徹底すれば、上司の細かい指摘に振り回されることなく、安定した発信を続けられます。
最終的に勝つのは「虚栄心を抑えた企業」ではなく、「接触頻度を維持した企業」 です。