
製造業BtoBが気づいていない「営業=メディア」構造
製造業BtoBの世界では、よく「うちは営業が強いから」と言われます。
それは誇るべきことですし、実際に日本の製造業は営業力によって成長してきました。
しかしその一方で、こんな現象も起きています。
- 情報発信は営業任せ
- コンテンツはパンフレット中心
- オウンドメディアは更新が止まっている
- Webに十分な情報がない
つまり、
営業が強い会社ほど、情報発信が弱い
という逆説が起きているのです。
製造業BtoBは「営業=メディア」構造
なぜそうなるのでしょうか。
製造業BtoBの特徴は、市場が狭く、顧客数が限られていることです。
さらに1社あたりのLTV(顧客生涯価値)は非常に大きい。
すると自然とこうなります。
- 既存顧客との関係性が最重要
- 新規開拓もターゲットが明確
- 名刺交換・展示会・紹介が中心
つまり、接点の多くは営業が握っています。
結果として、
情報は営業を通じて届けるもの
という文化が根付きます。
営業は単なる販売担当ではありません。
技術説明をし、課題を整理し、事例を紹介し、比較資料を出し、意思決定を支援する。
言ってみれば、
営業が企業のメディアそのもの
になっているのです。
パンフレット文化が生まれる理由
この構造の中では、コンテンツはすべて営業起点で作られます。
- 製品パンフレット
- 導入事例冊子
- 技術資料
- 比較一覧表
- 提案スライド
それらはすべて、営業が顧客に持っていくためのものです。
だから形式はPDFになり、印刷物になり、「営業が使いやすい形」で完結します。
ここで重要なのは、
パンフレット文化は単なる古い体質ではない、ということです。
それは、
営業がメディアだから合理的に生まれた文化
なのです。
営業が情報配信チャネルである限り、紙やPDFは最適解になります。
しかし問題は、その情報が企業の公開資産にならないことです。
実は、最強のコンテンツをすでに持っている
製造業の営業資料は、実は非常に優れています。
そこには、
- 顧客のリアルな課題
- なぜその製品が選ばれたのか
- 導入前の不安
- 比較検討の軸
- 導入後の効果
が丁寧に整理されています。
これはマーケティング視点で見ると、宝の山です。
しかし現実には、
営業資料は営業のもの
マーケティングの資産ではない
と扱われることが多い。
その結果、
Webサイトには当たり障りのない製品紹介だけが並び、
検索しても具体的な導入イメージが湧かない。
一方で営業は、毎回同じ説明を対面で繰り返している。
これは非常にもったいない構造です。
情報が存在しないのと同じ時代
生成AIや検索技術の発達により、
顧客は営業に会う前にかなりの情報収集を行います。
そのときWeb上に十分な情報がなければ、
その企業は「検討候補にすら入らない」
という事態が起きます。
どれだけ素晴らしい技術を持っていても、
どれだけ導入実績があっても、
公開されていなければ存在していないのと同じです。
だからこそ今、
営業資料を公開資産に変換すること
が重要になります。
本来あるべき役割分担
理想的な形はこうです。
情報そのものはWebで公開する。
顧客が自分のペースで理解できる状態をつくる。
そして営業は、
- その情報をどう活用するか
- 自社に当てはめるとどうなるか
- 社内説得のポイントは何か
を一緒に考える存在になる。
つまり、
情報を渡す人から、意味を与える人へ
営業の役割を進化させるのです。
営業が説明に使っていた資料をWebに展開すれば、
営業はより高度な議論に集中できるようになります。
新しいコンテンツを作る必要はない
「オウンドメディアをやらなければ」と考えると、
ゼロから記事を書こうとしてしまいます。
しかし製造業BtoBの場合、本当に必要なのは
既存コンテンツの再編集
です。
パンフレットを記事にする。
事例冊子をストーリー化する。
提案資料を読み物にする。
すでにある知見を公開資産に変えるだけで、
情報発信力は一気に高まります。
営業が強い会社ほど伸びる可能性がある
皮肉なことに、営業が強い会社ほど可能性は大きい。
なぜなら、
- 顧客理解が深い
- 課題を熟知している
- 豊富な事例を持っている
- 提案ノウハウが蓄積されている
からです。
足りないのは能力ではなく、
公開する発想
だけです。
営業が持つ知見を企業のメディアに変換できたとき、
その企業は単なる製造業から、
知見を発信する存在
へと進化します。
まとめ
製造業BtoBは長年、「営業=メディア」という構造で動いてきました。
その構造自体は合理的でしたが、
情報取得コストがほぼゼロになった現代では、
限界が見え始めています。
新しいコンテンツを大量に作る必要はありません。
すでに持っている営業資料を、
企業の公開資産に変換する。
それだけで、
情報発信力も営業効率も大きく変わります。
これからの製造業に必要なのは、
営業を強くすることではなく
営業の知見を開放すること
なのかもしれません。




