
製造業BtoBにおける専門商社の存在意義はどこへ消えたのか?
日本の製造業において、かつて専門商社は絶対的な存在でした。
メーカーの代わりに市場を歩き回り、
顧客の課題を拾い上げ、
最適な部品や機械を紹介し、
新規市場を切り開く。
メーカーからすれば
「自社の営業部がもう一つ存在するような頼もしい存在」
であり、商社なしではビジネスが回らない時代が確かにありました。
しかし今、多くのメーカーがこう漏らします。
「最近、商社ってただ伝票回してくるだけじゃない?」
「利益を持っていく割に、価値を感じない」
「技術の話が全然できない。結局メーカーが説明に行く」
これは単なる**「質の低下」**ではありません。
もっと深い、構造的な崩壊が起こっています。
本記事では、
- なぜ専門商社の“勝ちパターン”が崩れたのか
- そして今後、商社はどこへ向かえばいいのか
製造業BtoBのリアルに踏み込みながら解説します。
1. 最大の理由:情報の非対称性が完全に消えた
90年代まで、専門商社の最大の武器は 「情報」 でした。
- どのメーカーがどんな製品を作っているか
- どの企業がどんな課題を抱えているか
- どの部品メーカーとつなげれば最適か
- 市場の価格相場や新技術の動向
こうした情報は、商社マンの**“足”**によってのみ得られるものでした。
つまり商社は、
メーカーと市場をつなぐ唯一の情報チャネルだったのです。
だからこそ、
商社が10〜20%のマージンを取ることに、
誰も疑問を持たなかった。
しかし現代──情報の非対称性は跡形もなく消えた
- ネット検索で似た製品が一瞬で見つかる
- 海外メーカーとも直接やり取りできる
- 価格相場も比較サイトで丸見え
- ユーザー同士の口コミも透明化
つまり、
商社が握っていた “情報の壁” が崩れました。
製品の探索から比較検討まで、
顧客が自分でできる時代になったのです。
商社の価値は「情報流通」から「ただの中継」へ
メーカーからすれば:
「顧客はネットで探してくるし、
商社は注文書をメール転送するだけ…
これでマージンを取られるのは納得がいかない」
顧客からすれば:
「検索すれば出てくるから、
直接メーカーに問い合わせる方が早い」
こうして、
商社の最大の価値は消失しました。
2. 技術営業ができる人材が枯渇した
昔の商社には、こんな営業がいました。
「御社の生産ライン、この工程がボトルネックですね。
A社のこのセンサーと、
B社の制御モジュールを組み合わせれば改善できますよ」
これはもはや営業ではなく、
技術コンサルタントです。
商社はこの技術力によって、
メーカーの代わりに価値提案をしていました。
現代──技術のわからない商社マンの大量生産
- デフレでマージンが削られ続けた
- 技術教育に投資できなくなった
- 属人スキルが継承されない
- 業界横断で技術を理解できる人材が消滅
結果として生まれたのが、
「言われた型番を見積もるだけ」の御用聞き営業
- 技術の深掘りができない
- 課題に対する提案ができない
- メーカー説明の単なる中継
顧客から見れば、
「どうせ説明できないなら、最初からメーカーを呼んでほしい」
メーカーから見れば、
「これじゃ商社に任せる意味がない」
存在価値が縮小するのは必然でした。
3. 製品が「モノ」から「ソフト・仕組み」へ進化した
かつての製造業はシンプルでした。
- 部品を買う
- 機械を買う
- 配置すれば動く
しかし今は違います。
- IoT
- センサー連携
- クラウド管理
- 制御ソフトウェア
- API接続
- データ活用
- DX・業務システム統合
製品は
「鉄の塊」から「システムを構成する要素」 へ進化しました。
この変化に対応できなかった商社
多くの商社は未だに、
- ハード中心の提案
- ソフトを理解できない
- IT部門・DX部門と会話できない
顧客はこう感じています。
「全体最適を考えたいのに、
商社は部品の話しかしない」
商社の営業はこう答える。
「ソフトはメーカーに聞いてください…」
役割は、完全に失われつつあります。
4. コンプライアンス強化と「人間関係営業」の終焉
かつての商社の武器は 人間関係でした。
- 飲み会
- ゴルフ
- 接待文化
- 長年の付き合い
しかし今、購買プロセスは激変しました。
- 接待禁止
- 価格根拠の提示必須
- 数値での妥当性評価
- 人ではなく要件で選定
関係値という バフ(補助スキル) を剥ぎ取られた結果、
提案力そのものの不足が露呈しました。
まとめ:商社は「伝票係」になってしまった
昔:
- 情報を独占
- 課題を把握
- 技術で提案
- 関係性で案件創出
今:
- 情報はネット
- 技術営業が育たない
- システム理解が不足
- 調達は透明性重視
結果、商社は
「配送・請求代行業者」
へと変わりつつあります。
では、専門商社はこれからどう生き残るのか?
結論は明確です。
商社が復活する鍵は、
「システム理解 × DX対応 × 技術コンサル力」
モノを右から左へ流すだけの商社は、
確実に淘汰されます。
今後求められるのは、
- 生産ライン全体を理解した提案
- データ活用を踏まえた改善
- IoT・クラウド連携の知識
- メーカー横断の技術スタック
- 業務フロー最適化の視点
Vizlaboの視点:商社は「市場の翻訳者」へ
Vizlaboが製造業の支援をする中で感じるのは、
商社もメーカーも「伝え方」で損をしているという現実です。
これからの商社に必要なのは、
- 課題を理解し
- 仕組みを可視化し
- メーカー価値を翻訳し
- 判断できる形で提示する
トランスレーター(翻訳者)としての役割です。
Vizlaboの
3D・可視化・ナビゲーション技術は、
商社が失った説明力を補完します。
結論:商社は終わっていない。終わったのは「古い勝ちパターン」だ
専門商社が不要になったわけではありません。
- 情報の非対称性
- モノ売りモデル
- 人間関係営業
これら旧時代の武器が終わっただけです。
これからの商社は、
技術を理解し、
仕組みを語り、
課題を構造的に解決する存在
へ進化する必要があります。
製造業における商社の役割は、
静かに、しかし確実に変わろうとしています。





